想うこと3 経済とは何か(8)貨幣なき社会への空想
貨幣の役割に関して話をしました。
要約すると貨幣は第1義として「社会から恩恵を得られる権利を示す権利証」であり、更に貸借されることにより「物資と労力を集中させる」役割を担う、ということです。
現在の経済というのはこのような貨幣の役割を無視して、論ずることは出来ないでしょう。
しかし、このような貨幣へ注意を集中する結果、かえって経済の実際の姿が見失われる恐れがあると思います。
そこでこれは全くの仮想ですが、貨幣がなくても成り立つ経済がありえるか、と言う問題を考えて見ます。
実際、原始時代には貨幣のない時代があったので、貨幣がなくても経済が成り立つことがある、とは言えます。しかし現在のように複雑多岐にわたった経済社会は貨幣がなくては動きが取れないようにも見えます。しかし、敢えて空想の中で現在の社会から貨幣を取り除いて見るとします。
この空想の世界の中で、人々に今と全く同じような生活、仕事や買い物や飲食をしてもらいます。
ただ異なるのは貨幣のやり取りがないということです。
ですから買い物といっても、店に行って必要なものをとってくるだけです。
レストランに行って食べたいものを食べて、お金は払わないということです。
田畑で農作業をすることも、満員電車に揺られて通勤することも今と変わりません。企業が材料を集めて製品を作り、供給するのも今と全く変わりません。ただ幾ら製造しても企業が貨幣を支払ったり受け取ったりすることはありません。
空想の世界ではこのような経済社会はありえます。
すなわち、貨幣が全くなくても、同じように生産し、生活することは可能なのです。
敢えてこのような空想をしてみると、「貨幣が実際の生産や生活を支えているものではなく、実際の生産や生活を持続させているのは、人々の労働であり、物資の流れである」ということが明瞭に認識できます。
by masaaki.nagakura | 2009-01-12 11:43 | 想うこと
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