(はじめまして からのシリーズです)
昭和44年(1969年)に早稲田大学応用物理科学部を7年かかって卒業し、名古屋大学応用物理科大学院修士課程に入学しました。あとから入学試験の成績はトップであったと聞かされました。かっての万年留年生が1番ということですから猛勉の効果はあったのだと思います。 籍は応用物理科でしたが、身を置いたのは原子核工学科(現在量子エネルギー工学教室)の 伊藤憲昭研究室です。名古屋大学原子核工学科は出来てから4年目で学部4年生が最年長でした。 伊藤研究室では元気の良い4年生(加藤、高橋、立花、小林、石橋等各氏)や同僚の修士課程の鄭さんとともに心温かい教員(池谷、森田、西堂)の指導を受けて恵まれた研究生活を送りました。 原子核工学科の場所は緑も豊かで閑静で研究の環境としては最高と思えました。 更に研究費が早稲田大学に比して遥かに豊富で、私学と国立の違いはこれほどのものか、と驚きました。(逆に早稲田大学は乏しい研究費でよくやってるものだ、と感心もしました。) 私の研究テーマはアルカリハライド結晶のカラーセンター(*)の構造に関するものでした。(注*アルカリハライドというのはリチウム、ナトリウムなどアルカリ金属と呼ばれるものとフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などハロゲンとよがれるものが結合した結晶です。そのようなものにエックス線などを当てると一部の結晶構造が変化して着色するのですがその結晶構造の変化した部分をカラーセンターと呼んでいます。) 私は当時実験になれておらず、クライオスタットという液体ヘリウムで冷却し、真空断熱した装置を液体ヘリウムの入ったまま開放し、あわや装置を壊しそうになりましたが、この時だけは伊藤先生も渋い顔をし、私は大いに冷や汗をかいたものです。 名古屋大学の大学院生活のうちで全く波風がなかったかと言うとそうでもなく、ひとつには学園紛争の問題がありました。 私は早稲田大学で既に学園紛争を経験していました。昭和41年(1966年)授業料値上反対闘争として学生が150日間に亘り、大学の教室や構造を占拠するという事件です。 昭和44年1月には東京大学の安田講堂を占拠した学生を機動隊が排除するという安田講堂攻防戦なるものがあり、それを機に学園紛争が急速に全国の大学に広がりました。私が名古屋大学に入った年に、名古屋大学にも飛び火し、学生が豊田講堂や文科系の教室を長期にわたり占拠する形になってきました。 このような一連の学園紛争は学生の大学や社会に対する不満がいわば爆発したものと言え、私も彼等の心情が理解できましたが、まとまった思想性は皆無で、不毛な結果しか齎さないと観ていました。 その頃名古屋大学でも紛争に参加していない(普通の)学生の集まりでこの是非が論議される機会がしばしばありましたが、私は早稲田大学での経験も語り、一貫して反対の意思表示をしていました。 私の意見が多少影響したのかは分かりませんが、名古屋大学の学園紛争は紛争に参加してない学生達がバリケードを突破して占拠を解除するという恐らく学園紛争の中では異例の終焉を迎えました。(学生達のバリケード突破の後に機動隊が入ったため新聞では機動隊による解除のように報道されていたかも知れませんが) 私はこのことについては名古屋大学の学生達には随分しっかりした連中がいるものだと本当に感心しました。 (自己紹介のつづき その4へ)
by masaaki.nagakura
| 2005-04-18 12:45
| 自己紹介
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