想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (8)1号機と3号機のジルコニウムー水反応による水素発生量
福島第一原子力発電所の1号機は地震での自動停止の後、4時間程度で燃料集合体の上部が水面上に露出し、更に1時間以内にジルコニウムー水反応を開始したのではないかという推定を述べました。
ここではどの程度の水素が発生したかについて考えて見ます。

ジルコニウムー水反応の形態は次のように考えられます。

Zr+2H2O⇒ZrO2+2H2
あるいは
Zr+4H2O→Zr(OH)4+2H2
いずれにせよ、Zrの1原子が水と反応しH2(水素)2分子が出来ます。
あるいはZr 1molに対して水素ガス 2molが出来るのです。

計算では1号機の圧力容器内の被覆管全体で約21トンのジルコニウムがあります(いやありました。)
ジルコニウムの原子量は91.224ですから、21トンのジルコニウムは230kmol(21000÷91.224)です。
これが全て反応するとすれば水素460kmolが発生します。
これは標準状態(0℃、1気圧換算)の体積として10300m3に相当します。
これは最大です。 発生した水素はこのうちの一部ですがそれがどの程度かを推定します。

この推定は次の仮定で行います。
①全長4.35mの燃料集合体が水面上に露出したのは1.7m程度である。
(3月12日15時28分の時点で1.7mとの報道あり)
②燃料集合体の上部0.4mにはペレットが入っていない。
③燃料集合体でペレットの充填されている部分は3.5mである。
④ペレットの充填されている部分で水面上に露出した部分は全てジルコニウムー水反応を起こし、水没している部分ではジルコニウム-水反応は起こらない。

以上からべレット充填部の水面上に露出した部分は1.3m(1.7-0.4)であり、それはペレット充填部全体の長さ3.5mの37%です。従って水素発生量は10300m3の37%、すなわち3800m3です。

次に3号機ですが3号機は内装されたウラン量が94トンで1号機のウラン量69トンの1.36倍です。
上記の1号機に比してジルコニウム量も1.36倍の29トンと概算されます。
またジルコニウムの全量反応時の水素発生量も1号機の1.36倍の626kmol=14000m3(標準状態)となります。

水素発生量は次の仮定で推定します。
①全長4.47mの燃料集合体が水面上に露出したのは2.95m程度である。
  (3月13日7時30分の時点で2.95m露出と報道あり)
②燃料集合体の上部0.45mにはペレットが入っていない。
③燃料集合体でペレットの充填されている部分は3.5mである。
④ペレットの充填されている部分で水面上に露出した部分は全てジルコニウムー水反応を起こし、水没している部分ではジルコニウム-水反応は起こらない。

以上からべレット充填部の水面上に露出した部分は2.5(2.95-0.45)であり、それはペレット充填部全体の長さ3.5mの71%です。従って3号機における水素発生量は14000m3の70%、すなわち9800m3です。
by masaaki.nagakura | 2011-03-23 20:04 | 想うこと
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