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想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (20)1,3号機水棺の問題点-2011年4月21日記
原子力安全・保安院は「福島第一原子力発電所の1号機で4月17日から水棺に着手している」という報道がなされています。一方て東京電力は「現時点で水量を増やして水で満たす作業には着手していない」との事です。

現状で水棺が着手されているか、いないかはともかく東京電力は17日の発表で「1,3号機は3か月後までに格納容器を水で満たし、熱交換器も設置して安定な冷却(水棺)を完成させる、その後の3から6か月で原子炉を100℃未満の冷温停止状態にする」としています。

「水棺」には次の問題点があり、もし実施するにしてもそれを十分に考慮して実施してももらいたいと思います。(当然考慮されているとは思うのですが、報道には見られないようなので敢えて記したい、と思います。)

(1)現状は1号機の炉心冷却のために注入されている水の恐らく大部分が格納容器内にとどまり、意図すると否とに関わらず水棺を進行させている状況である。いわば、格納容器が注入水の貯留場所になっている。
敢えてより多くの水を注入することで、その貯留場所を水で満たしてしまえば、そのあとは注入水は外部に溢れ出すことになる。

(2)意図的に3か月で水棺をして尚且つ上記(1)の結果(水の格納容器からのあふれだし)をもたらさないためには水棺の終了と同時に注入水を循環可能な冷却系が準備されていなければならない。

(3)現状の高放射線のもとで3か月の間に信頼に足る冷却系の設置が可能か、が問題となる。

(4)もし3か月の間に循環式の冷却系の設置が可能であるとすると、その時点から循環式の冷却により炉心を冷やせば、安定な冷却が可能になるわけであるから、水棺の必要性が本当にあるのだろうか。
(水棺により格納容器内に水素が溜まる可能性は排除できるので格納容器内での水素爆発を回避できるという利点が生じることは確かです。しかしそうであれば水棺の目的が格納容器内での水素爆発の防止であるということを明示してもらいたいものです。)

(5)特に3号機については格納容器に漏えいの可能性があり、水棺をするのであればその漏洩個所の有無の確認ともしあるならその閉止が先であって、水棺をするにしてもその後の作業である。また上記のように水棺の完了までに循環式の冷却系を完成させる必要があり、3か月内に水棺終了というスケジュールを出すのは早計ではないのか。

以上についてはすでに考慮の上で計画を立てていると思いますが、敢えて疑問を呈します。
(このブログを福島第一原子力発電所の事故対策に関係している国や企業の方々のどなたかが読んでいただきていると期待して、以上を記しました。)
by masaaki.nagakura | 2011-04-21 07:10 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (19)放射性物質漏洩経路等に関する不明点
私が原子力関連企業(三菱原子力工業、三菱重工業)に27年間勤務したこともあって今回の原子力発電所事故についての解説を求められる事があります。
最近私の在住する埼玉県小川町にある小川高校の松本先生の依頼があり、4月30日に東松山のある集会所で福島第一原子力発電所の事故についての解説をすることになりました。

そこで今回の事故の状況について更に詳しく調べようとして、特に福島第一原子力発電所のBWR(沸騰水型軽水炉)の構造と配管系統構成をネットでもって調べています。

因みに三菱関係の建設してきた原子力発電所はPWR(加圧水型軽水炉)です。
だからと言って私はPWRについてそれほど詳しいわけではありません。私が原子力関連企業で27年間にやってきたことは主に「ウラン濃縮、放射線計測、放射性廃棄物処理・処分、核融合炉の燃料であるトリチウム取扱技術の研究開発」です。 その他原子力発電所の定期検査で核燃料検査(使用済燃料一時保管プールにおかれた燃料集合体の健全性に関する検査)にも数回従事し、またスリーマイルアイランドの事故の時は水素爆発の可能性に関する評価なども行いました。しかしPWRそのものについて深く突っ込んだ経験はありません。

ですから今回の事故がもしPWRにおいて起こったとしてもやはりその構造や配管系統構成についてはネットで調べるしかなかったと思います。

特に配管系統構成について調べる必要があるのはどのような経路を辿って放射性物質が大気や建屋内に放出しているかを知ることが、今後の対策を考える上で重要だからです。

次の資料は特に系統構成についてのある程度の詳細が掲載されています。

資料1 福島第一原子力発電所における事故の経緯と今後の可能性について
  :平成23年4月10日東京大学大学院工学系研究科教授9人連名での公開資料

資料2 平成21年度地震時レベル2PSAの解析(BWR)
  :平成22 年10 月独立行政法人 原子力安全基盤機構発行

特に資料1は今回の事故の経緯や放射性物質の漏洩経路についても検討されてる点で有用です。

それでも現状ではどうしても不明な点というか不思議な点がいくつかあります。

不明点1 1、3号機の水素爆発が起こるまでに水素が圧力容器から原子力建屋への漏洩経路
説明:圧力容器内の水位の低下を防ぐため水蒸気の出口配管部に設けられた逃がし弁(主蒸気逃がし安全弁)を開放し水素と水蒸気が格納容器に逃がし、そのあと格納容器内の圧力が高まったために格納容器から外気に通じるベント(ドライベント)を開放して水素と水蒸気を放出した、と考えられるが、そのベントが格納容器から排気筒(煙突のようなもの)に通じているならば、原子炉建屋内にあの水素爆発を起こすだけの水素は放出されなかったはずである。とする水素および水蒸気はベントより直接原子炉建屋に放出された事になる。
入手した配管系統図の中にベントとそれに結合する配管が記載されたものがないこともあり、詳細がつかめない。

不明点2 1,2,3号機の現状における水蒸気の圧力容器から大気への放出経路
説明:現在も水蒸気(ヨウ素、セシウム等を幾分伴う)が格納容器のベントから大気に放出されていると考えられるが、排気筒を通しているのか、否かが不明である。それに可能であれば圧力容器内の気体を止むを得ず大気に放出する場合には圧力抑制室(格納容器の下部を取り巻くドーナツ状の室)の水をくぐらせてヨウ素等をある程度除去して放出するのがベターであるはずだが、それがなされない理由は何かが不明である。

不明点3 1,2,3号機において原子炉建屋、タービン建屋に蓄積している放射性物質含有水の漏洩経路
説明:全体で6万トンと言われる建屋内に蓄積している放射性物質含有水の一部は津波によると考えられるが津波の海水は放射性物質を含まず、少なくも一部は圧力容器から来ている。また圧力容器には冷却のため位水を注入せざるを得ず、その注入水の一部は建屋に流出する。その流出経路はどこかが不明である。
格納容器、圧力抑制室の一部に漏えい個所があるのか、あるいは圧力容器、格納容器、圧力抑制室のいずれかに結合する配管の一部に漏えい個所があるのか不明である。

不明点4 2号機の復水器に蓄積していた水の経路
説明;2号機の復水器に水を入れようとしたら既にかなり入っていたという。その水の経路はどこからか?
原子炉の停止時には圧力容器からタービンおよび復水器に通じる主蒸気配管は主蒸気隔離弁により閉鎖され、圧力容器内の水はタービンや復水器に行かないはずである。しかし、主蒸気配管以外に圧力容器に通じる配管は無いようであり、とすれば主蒸気隔離弁が損傷し、閉鎖能力を喪失していたことが考えられる。
(圧力容器内の圧力が設計値オーバーとなり、その時に主蒸気隔離弁が閉鎖機能を喪失した可能性がないか?)

不明点5 冷却水の注入経路
説明:圧力容器に注入されている冷却水の注入経路が不明である。上記東京大学の資料には2号機の場合消火器ラインから注入とあるが、それがどの部分か不明である。

以上5点が私にとっての不明点です。
まだ誰にもわかっていないこともあるかもしれませんが、どなたかわかる方がおられたら教えてください。
by masaaki.nagakura | 2011-04-17 21:40 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (18)解決ためになすべきこと
福島原子力発電所の事故に関するブログは前回でひとまず終わりにしようと思ったのですが、どうしても記しておきたいことがまだあると考え、あと2,3回継続しようと思います。
一つは現状において何が最も根本的な課題であり、それに対して何をなすべきか、ということです。
私の結論を先に言うと「放射性物質を含む水の処理が最も根本的な問題であり、それに対してはその水中の放射性物質を除去、密封するための多分相当大規模な放射性廃水処理設備を建設、稼働すべきである」ということです。

この理由についてやや詳しく説明します。

現在放射性物質を含む水の問題が毎日のように報道されていますが、この問題が発生しているのは当然のことであり、驚くように報道されていることがむしろ不思議です。
この点については(10)でも記しましたが、再度わかりやすように記します。

現状では1,2,3号機の圧力容器内の核燃料は崩壊熱を出し続けており、冷やさなければなりません。
(なぜかと言えば冷やさないと圧力容器内の水が蒸発して減少し、燃料集合体が露出して、ジルコニウム-水反応による被覆管の損傷の拡大と水素の発生、放射性物質の大気中への放散を招くからです。)

ところで冷やすためには圧力容器への水の注入が必要です。圧力容器に注入された水はそこでなくなるわけでなく注入した分が水蒸気、もしくは液体の水として圧力容器外(格納容器内もしくは格納容器外)に排出されます。
格納容器内に放出された水蒸気は一部はベントを通じて意図的に大気中に放出されますが、他は再び液体の水となって格納容器内に蓄積します。 しかし格納容器も水の貯留量に限界があるのでやがて格納容器外に放出されます。

結果として核燃料の冷却のために圧力容器に注入される水の一部は水蒸気として大気中に放出され、他は全て液体の水として原子炉建屋かタービン建屋に蓄積し、あるいはそこから海洋や建屋外のトレンチなどに放出されます。

当然のことながら大気中に放出された水蒸気はヨウ素やセシウムなどの揮発性放射性物質を同伴し、液体の水として放出された水は揮発性放射性物質以外のあらゆる核分裂生成物、ウラン、プルトニウム等を含みます。

現在の状況というのはこのようにして放出された水が格納容器、原子炉建屋、タービン建屋などに蓄積し、そこも満杯になって一部は外に流れ出しているという段階にあるということです。

そこでその水を外部のタンクに回収しようという試みが開始されつつあります。

しかし、問題は圧力容器に水を注入する限り、そこからまた水は出続けるということです。

先日の報道では水の注入量は1号機で1時間に6トン、2号機で8トン、3号機で7トンということです。
合計で1時間に21トン、一日に約500トン、1か月で約15000トンです。

これらのすべてが液体の水として外部に排出されるわけではなく、一部は水蒸気として大気中に放出されています。大気中に放出される分と液体の水として排出されている分の比率がどの程度であるか定かではありませんが、水の蓄積量は毎日かなりの割合で増え続けているはずです。

2号機のタービン建屋にある約2万トンの水を集中廃棄物処理施設の3万トンの貯留タンクに移す計画が進んでいるようです。これは2号機のタービン建屋からトレンチへそしてトレンチから海へという高濃度放射性物質汚染水の流出を防ぐための応急処置として止むを得ないのかも知れませんが、問題はそのあとです。

一つの問題は集中廃棄物処理施設周辺の放射線量が非常に高くなり、人の近づくのが容易ではなくなる、という可能性があり、それにどう対処するかです。

もう一つはもし、2号機のタービン建屋の蓄積水をすべて移送したとしても、さらに圧力容器からの水はタービン建屋にも排出され続ける可能性が高いことです。
水を移送する目的の一つはタービン建屋からトレンチに流れ込む水をなくす為であり、移送の結果、しばらくトレンチへの流出は止まるでしょう。しかし水の移送のもう一つの目的はタービン建屋の放射線量を減らしてタービン建屋に近づき、冷却ループの回復のために必要な作業を行うことです。
水をすべて移送しても新たに放射性物質を含んだ水がどんどん出てくるようではいつまでたっても放射線量の低減ができません。 また水のあった場所には放射性物質(特に粒子状)が多量に残存している可能性があり、これらの除去作業も必要になります。

放射性物質汚染水を別の場所に移すというやり方は応急処置として止むを得ないとしても、永続的な処置にはなり得ないでしょう。

そこでその放射性物質汚染水から放射性物質を除去し、密封し、一方放射性物質を除去された水を直接海洋へ放出する、もしくは一定期間タンクに貯蔵して後海洋に放出することのできるような放射性廃水処理設備が必要となります。

この放射性廃水処理設備の容量は相当に大規模である必要があります。
短期間にすでにある6万トンと言われる放射性廃水とこれから出続けるであろう放射性廃水を処理するためにどの程度の規模の設備が必要かを考えてみます。

たとえばそのような設備を6か月のうちに建設し、さらに6か月の稼働でそれまでに蓄積した放射性廃水の全量を処理するとします。 放射性廃水が圧力容器から排出される量を1日300トンとしますと、1年で約11万トン、これに現在ある6万トンを加えて17万トンと6か月で処理する必要があります。 これは1日に932トン、1時間で約40トンという事になります。

このような放射性廃水処理設備はどの程度の規模でしょうか。
参考のために1時間に40トンの水を蒸発濃縮するとした場合の電力を計算してみます。
20℃の水1kgを蒸発させるには20℃の水を100℃に加熱するのに80kcal、蒸発させるのに540kcalの合計620kcalを必要とします。 40トンの水の蒸発には2480万Kcalを要します。これは約28800KWHです。 すなわち28800kWの電力があれば可能です。
熱回収を図ればより少ない電力で蒸発濃縮処理が可能でしょう。

フィルタリング、吸着、イオン交換樹脂、オゾン処理等を適当に組み合わせた処理であれば、より電力は少なく、また設備もより短期間にできる可能性があります。

最も早期に建設可能で且つ相当程度の放射性物質の除去ができると思われる方法はフィルタリングです。
放射性廃水をタンクに回収するにしても、フィルタリングをしながら回収すれが、その放射性レベルはかなり、低くなりそのあとの処理を容易にするでしょう。(最初から高濃度の放射性廃水をタンクに導入すると、タンク内の放射性廃水を処理した後のタンク自身の除染も相当大変になると予想されます。また高濃度の放射性廃水を多量に蓄えタンクは周辺に強い放射線を出しますので、タンクそのものの扱いが困難になる可能性があり、その意味でもせいぜい、フィルタリング程度をしてタンクに入れるのが良いかも知れません。)

以上は参考のために私の発想を紹介したまでで、この発想自身それほど煮詰めたものではありません。

現在重要なのは、放射性廃水から放射性物質を除去するために、どのような方法でどのようなスケジュールで行うかについて、国、行政機関、電力会社、原子力関連企業、有識者等の英知を集めて早期に計画を立て、着実に実行することです。
by masaaki.nagakura | 2011-04-16 07:41 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (17)事故の歴史的位置付けと今後のあり方
福島第一原子力発電所の事故はどうして起こってしまったのか、今後この事故の対策をどのようにすれば良いのか、また今後原子力発電をどのように進めていくのか、あるいは廃止して行くのか等考えるべきことは多々ありますが、まだそれらの結論を出すには到底至っていません。
ひとまず、この事故についてのブログは終わりとしますが、まとめに替えて深く思うところを記します。

この事故は日本にとっても、世界にとっても歴史的な事件として捉えるべきものであるとの感を深く持ちます。 またおそらく、未来においても世界中を震撼させた歴史的事件として永い将来に亘って人類の記憶に留められるであろうと推し量られます。

この事故を導くことになった関東東北大震災は日本の歴史において国家全体を揺るがした「蒙古襲来」と「黒船来航」に匹敵する事件であると観ております。

大地震というだけであるならば過去に何度もありました。死者数から言えば、関東大震災は10万人を超えたと言われ今回の3倍以上です。しかし今回の地震は福島第一原子力の事故という2次災害を招いたという点で過去に例のないものです。 この事故への対応は極めて困難であり、且つ長期に渡って継続する必要があります。まさに国をあげて対応を迫られているという点で「蒙古襲来」と「黒船来航」に匹敵するものです。

想うにこの事の重大性については多くの人々の認識がまだまだ甘いように思います。
無論いたずらに大げさに騒ぎ立てるつもりはありません。考えてもらいたいのは「このことの重大性を正確にとらえ、的確な対応をしなければ、さらに大きな災害を導く可能性が十分にある」という現実です。

今やこの事故への対応は国の機関や東京電力のみに依存して解決可能な段階を超えており、全国の企業や個人の知恵と力を結集して立ち向かわなければならない状況に立ち至っていると考えます。


さてどうしてこのような事故が起こってしまったかについて、私の感想を記します。

この事故の遠因には産業革命に端を発した近代文明の考え方があると思います。
産業革命は石炭のエネルギーを動力に変える蒸気機関という技術の発展から始まっています。
それ以来石油、天然ガス等のエネルギー源も加わり、人類の物質文明は飛躍的に進展しました。
人類の多くはその重労働から解放され、物質的に豊かになるとともに余暇も得られるようになりました。
人間の生活も電気の恵みにより、夜は明るく、冬は暖かく、夏は涼しく、洗濯は洗濯機で、食品保存は冷蔵庫でとどんどん快適になってきました。しかしこの快適さへの賞賛の中にこそ落とし穴が潜んでいたのです。
つまり、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料は何億年も前に作られたもので有限なものです。もし掘りつくしてしまえば、ようやく得られた快適な生活を失わなければなりません。そこに登場したのが原子力です。 拍手を持って迎えられたのも無理はありません。(実際にはウラン燃料はエネルギー換算で石炭ほどの埋蔵量はありません。そこでウランを燃やしてできるプルトニウムが着目され、さらに海水中に含まれるトリチウムを燃料とする核融合炉が開発されつつあります)
しかし、原子力発電を実用化するにあたって出てきた大きな問題はそのコストです。従来の化石燃料を燃やす火力発電に比して、あまり高額であれば市場での出番がありません。
そこで徹底的な簡素化がなされて何とかコスト面で火力発電に対抗できるような構造とされたのが現在の発電用原子炉です。
勿論原子炉に特有な放射線の問題があることは原子力発電炉開発の当初から十分に認識されており、そのために5重格納(燃料ペレット、燃料棒の被覆管、圧力容器、格納容器、原子炉建屋)という放射性物質の閉込機能が付与されました。
しかし、本当に5重の閉じ込めであるのか、これは大いに疑問です。第一に圧力容器からは配管が格納容器を貫通して外部に引き出されており、その配管からすれば、格納容器というバリアはないも同然です。
(4月17日追記:福島原子力第一発電所の1号機から4号機はBWRのMARK1というタイプでその系統を調べてみると格納容器から配管が出ている部分では格納容器側にバルブが設けられており、事故時にそれが閉鎖されているとすれば、そのバルブが格納容器と同じ一つのバリアとして数えられます。しかし復水器にはそのバルブで閉じ込められるはずの水が流れ込んでいることが確認されています。そのバルブが閉じ込め機能を保持していなかった可能性があります。)
今回の事故においても建屋内に放射性物質を多量に含んだ水が排出されておりますが、これらの水はいとも簡単に格納容器のバリアを乗り越えています、というか恐らくこのような水は格納容器というバリアからフりーな配管もしくはそれに結合する機器から漏出しています。
それから核燃料の装填された原子炉が宿命的に持つ問題点として、常に冷却水が必要であるという点があります。その冷却水は通常時であれば循環ループを形成しているのですが、いざ循環ループが働かなくなると、水を原子炉建屋の外部から供給し、且つ外部に排出せざるを得ません。(現状の福島第一原子力発電所ではタービン建屋の内部に排出さていますが、いずれその場所は満杯になるので外部に排出せざるを得ません。)つまり、冷却水循環ループが使えなくなった時点で5重格納から格納容器と原子炉建屋が抜けて3重格納になります。 しかも今回の場合は地震直後に冷却機能が喪失し、燃料棒の被覆管がジルコニウム-水反応で破られてしまったので燃料ペレットと圧力容器の2重閉じ込めになっています。より正確には燃料ペレットと圧力容器およびそれに結合している配管、機器の2重閉じ込めということになります。確かに圧力容器というのは16cmもある鋼材で作られ丈夫そうですが、それに結合している配管、機器のすべての場所がそれほど丈夫というわけでなく、圧力容器内の圧力が上昇すれば、それに繋がる配管、機器のすべてで圧力が同じように上昇し、最も弱い部分が破損し内部の水が漏えいすることになります。これが現状の状態で燃料ペレットのみの1重格納です。
このように見てくると5重格納というのは安全神話であり、実態がなかった事と思えます。
このような安全神話ができてしまった背景には次の社会的意識の連鎖があるようです。
エネルギー多消費文明への依存⇒化石燃料枯渇への不安⇒原子力発電への期待⇒原子力発電のコスト低減への要請⇒安全神話の形成

そしてこの安全神話の形成が十分な安全性に関する感覚を鈍らせ、今回の事故に至ったと考えられます。
この安全神話が続いていた限り、いつかこのような事故は起こったのではないでしょうか。

無論このような安全神話からくる大事故を引き起こした主体には国、電力会社、原子力関連メーカー等があり、それらの責任はまのがれがたいでしょうが、一方にはエネルギー多消費文明への依存という社会全体の風潮が、それを後押しした、という面も見るべきでしょう。

今後の原子力発電の運命には次のいづれかがあるでしょう。
(1) 原子力発電をただちに停止し、廃炉に移行する。
(2)時間をとりつつ順次停止し、順次廃炉に移行する。
(3)新規の原子力発電所は作らないが、現状の発電所は安全対策を施して継続する。
(4)安全対策を見直した上で、新規の原子力発電の建設を認める。

上記のいずれにせよ、「エネルギー多消費文明への依存」という社会的意識が継続する限り、問題は起こると思います。 たとえば原子力発電所を全廃したとしても「エネルギー多消費文明への依存」がある限り、化石燃料の使用料は増大し、その結果地球温暖化による災害もしくは化石燃料の枯渇が起こるでしょう。

したがって今後の一番大きな課題というのはこの「エネルギー多消費文明からの脱却」であると思います。
今回の事故はそのような方向への日本人の意識、否人類の意識の変革を求める天の啓示ではないのでしょうか。

以上をもって「福島原子力発電所事故を考える」というテーマで記してきたブログをひとまず終わりといたします。
by masaaki.nagakura | 2011-04-15 08:56 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (16)放射性物質除去へのオゾン利用の可能性
私がオゾン発生機を製造販売している会社を経営していることもあり、放射性物質の除去にオゾンが使えないかを考えてきました。
最初に考えたのは飲料水中のヨウ素除去です。
ヨウ素はイオンの形で溶けているものが多いと考えられますが、それだと活性炭とか吸着材には捕まえにくいのですが、オゾンガスを水中にバブリングすると分子状のヨウ素(I2)になります。(この現象ははオゾンの発生量の定量にも用いられる、オゾンを扱う人には良く知られています。)
分子状のイオンになったものは活性炭にも捕まるだろうと考えて、実験をしてみました。
少量のヨウ化カリウム(非放射性)を水に加えてイオン状のヨウ素を加えた水にオゾンをバブリングすると、確かに分子状のヨウ素になります。これは水がヨウ素の色である茶色になるので目視でも解ります。
そこでその水に活性炭を加えると茶色い色が消えて透明になりました。しめた!と思ったのですが、念のためにその水に再びオゾンをバブリングして見ました。するとまた茶色くなり、水中にヨウ素が残っている(しかも色の具合から前と同じくらい)ことが解りがっかりしました。どうも分子状のヨウ素は活性炭により再び、イオン状になったようです。(これと似たような現象は海水のオゾン殺菌で知られています。海水にはイオン上の臭素が含まれていて海水にオゾンをバブリングすると臭素酸という魚毒性のある物質が生成され、魚の養殖には有害です。そこでオゾンバブリングした水を活性炭層に通すと元のイオン状臭素に戻ります。)
活性炭とは別の吸着材であれば分子状のヨウ素をそのまま吸着してくれるかも知れませんがまだ試していません。
次はまだアイデア段階ですが、福島第一原子力発電所に蓄積された放射性物質(ヨウ素、セシウム他多くの核分裂生成物、ウラン、プルトニウム)を含む水にオゾンガスをバブリング、エジェクターなどで接触させる方法です。 この処理によりイオン状で溶けている多くの放射性物質は非イオン状になり、その多くのものが非溶解性(水に溶けない性質)の物質として粒子状になると期待できます。そうなればそれは沈殿法や微粒子フィルター等で除去出来ると考えられます。 粒子状にするための効率を上げるために凝集材を用いることも考えられます。 更にオゾン接触法と併用して共沈法も用いればイオン状の放射性物質を粒子状にする効果を高められる事も期待できます。
このようにして大分部の放射性物質をを粒子状にしてしまえば、そのあとは沈殿法とフィルタリング、必要に応じて吸着等の方法で大半の放射性物質を除去できると期待できます。
(以上はまだアイデア段階であることは了解下さい)
by masaaki.nagakura | 2011-04-13 07:38 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (15)放射性廃液の蒸発濃縮方法の実現可能性
福島第一原子力発電所で6万トン滞留しているといわれる高濃度の放射性物質を含有した水を保管するためにタンクやメガフロート、船などを次々調達し、あるいは建設しても、今度はその保管場所の周辺の放射能が高まり、人の近づけない領域がますます増えつづけることになります。
どうしてもその水から放射性物質を除去して、放射性物質の濃度を海洋放出の許容される限界まで下げて放出し、除去された放射性物質は極力減容して、狭い範囲に閉じ込める工夫が必要となります。
水の蒸発濃縮はその一つの方法です。次の図はその方法の概念図(1例)です。
d0026078_939188.jpg


蒸発濃縮によって、全ての放射性物質が除去されるわけでなく揮発性の放射性物質の一部は残りますので、蒸発濃縮だけで水中の放射性物質が許容濃度までさがるわけにはいかず、海洋放出のためには追加の除去が必要でしょうが、相当程度の除去効果と減容効果が期待できます。

蒸発濃縮というのは水の蒸発に要するエネルギーが大きく、現実的でない、という意見もあります。
実際にはどうなのかここで検討してみます。
1kgの水を蒸発させようとしてたら、元の温度を20℃とし、100℃まで温度を上げるのに80kcalで蒸発熱540kcalを加えて620kcalです。 1トンの水ならその1000倍の62万kcal必要です。
現在福島第一原子力発電所にあるとされる6万トンの水を蒸発させるとしたら、372億kcalの熱が必要です。これを電力でまかなうと約4300万KWHの電力になります。 これは出力100万kWの原子力発電所の電力を全て使って43時間かかることになります。実際にはそんな大規模な蒸発設備の建設は短期間には無理でしょう。仮に出力1万KWの蒸発設備を用意できたとすると4300時間で約180日かかることになります。
これが現実的かどうか、現状では私には判断できかねますが、不可能な範囲ではないように思えます。

出来れば省エネルギーを図り、より速やかに蒸発処理を達成できることが望ましいでしょう。
原理的には水を蒸発させて出来た水蒸気を水に戻すときに発生する潜熱(蒸発熱に等しい)によりこれから蒸発させようとする水に与える事により87%(540kcal÷620kcal)の熱が回収されます。
上記図はそのような回収を意図したものですが、残念ながらまだアイデア段階です。

以上の検討で蒸発濃縮は必ずしも非現実的な選択ではないと思いました。
また熱回収により省エネルギーを図る工夫など多く人の知恵を集めて検討する事も意味あると思います。

補遺:若干奇抜な発想ですが、現在の福島第一原子力発電所の1,2,3号機をそのまま蒸発濃縮に利用するということも考えられます。
現在1時間あたりの注水量は1号機で6トン、2号機で8トン、3号機で7トンという報告があります。
これらの注水量の大部分は1度水蒸気になっていると考えられます。合計で1時間21トンが水蒸気化されているとすると6万トンの水を処理するのに120日と言う事になります。 実際にはこれより長くかかるでしょうが、上記本文の1万kWで180日と言うのと同程度の処理能力は持てそうな気がします。
ただし現状の6万トンの水には塩分が含まれている可能性が多分にあり、その場合には原子炉圧力容器内の水の一部を抜きながら蒸発処理をする等の手段を考えておく必要があるでしょう。
by masaaki.nagakura | 2011-04-06 09:39 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (14)水中放射性物質除去方法
福島第一原子力発電所のサイトに放射性物質を含んだ水を処理する設備を作る計画があるようで望ましい方向と思います。問題は処理の内容です。新聞に記されたことは放射性物質含有水を貯蔵するタンクを設置し、減衰するまで保管する、といった話です。無論タンクは必要でしょうか、タンクにいくら長期間保管してもそのまま放出できるレベルには到達しません。ということはタンクを限りなく作り続けなければならないことになります。
そこでどうしても必要なのが「放射性物質を水から除去して、水は放出し、回収された放射性物質を安全に保管するための処理設備」をです。

この節ではこの点についての意見を記します。
放射性物質を含んだ水の中の放射性物質の形態は次の4種です。
①粗大な固形物
②微粒子状固形物
③非イオン状溶解物質(原子及び分子状で溶解しているもの)
④イオン状溶解物質(イオンとして溶解しているもの)

これらの放射性物質を除去する方法は多様ですが、既存の方法では以下が一般的です。
①は沈殿槽、ストレーナ、粗フィルター等、②は微細なフィルターで除去するのが一般的でしょう。
③④は凝集沈殿、膜分離、吸着、蒸発濃縮です。
特に④はイオン交換樹脂による除去も可能です。

最初の問題はこれらの技術をどのように組み合わせていくのが、効果、建設期間、安全性、コスト等の点で適したものであるかを、見出すことです。既存の技術のみならず新技術も取り入れることも考慮に入れるべきです。 新技術としてはマイクロバブル浮上、ナノバブル、オゾン処理、マイクロポーラスガラス、遠心分離なども考えられます。

いずれの方法を用いるにしても、回収した放射性物質は濃縮され、より高濃度の放射能を持つ形になっているので、その放射線の遮蔽方法、移送方法、保管方法等を予め考えておく必要があります。

次は放射性物質除去方法に関する私のとりあえずの考え方です。

(1)粗大な固形物
 原子炉建屋やタービン建屋にある放射性物質を含む水(以下放射能汚染水または水と略)を汲み上げてもある程度以上に粗大で比重の大きなものは水の中に残ります。これらには、ジルコニウム-水反応で燃料棒が破損した際に出来た酸化ジルコニウムのかけらもあります。また圧力容器内で高熱と冷却を繰り返す間に熱ストレスで破砕した核燃料ペレットのかけらという非常に高い放射能を含むものもあります。 ペレットは比重が10.4g/ccと非常に大きく、相当小さなかけら(たとえば径が0.1mm程度)でも水に沈んだまま水中に残ります。これらはくみ出すことは困難であり、放射能汚染水が殆ど回収された後に、バキュームカーのようなもので吸い出す等の操作が必要でしょう。
比重の比較的軽いものの一部はくみ出し水と一緒に出てでしょう。
これらは鉛遮蔽体内に装着されたフィルター(目の粗いフィルター)に回収します。
粗フィルターが目詰まりするほどになったら、鉛遮蔽体に入ったままの形で交換します。

(2)微粒子状固形物
微粒子状固形物は酸化ジルコニウムや燃料ペレットの微細化したものを含みます。
これらはは放射線遮蔽体内に装着された微粒子フィルターで除去します。微粒子フィルターが目詰まりを起こしたら放射線遮蔽体ごと交換します。放射線遮蔽体は厚みのある鉛、コンクリート、鋼鉄などで放射線を遮るものです。この構造の概念の一例を次に示します。
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(3)非イオン状溶解物質
これには揮発性の放射性物質(ヨウ素、セシウム、ストロンチウム)や気体状の放射性物質(キセノン、クリプトン、トリチウム)の水に溶解したものが含まれます。
これらは放射線遮蔽体内に装着された吸着材で除去することが考えられますが、どのような吸着材が適切か現状突き止めていません。

(4)イオン状溶解物質
ヨウ素、セシウム、ストロンチウムのイオンの他各種の核分裂生成物のイオンが含まれます。
放射線遮蔽体内に装着されたイオン交換樹脂で除去することが考えられます。
ただし膨大な量のイオン交換樹脂が必要とされる可能性があり、予めその推定が必要です。
もしイオン交換樹脂の必要量が膨大であり、その採用が非現実的であるならば、オゾン酸化によりイオン状のものを非イオン状のものにして、更に必要に応じて共沈等により微粒子として微粒子フィルターで除去する方法が考えられます。

以上の他、水の蒸発濃縮という方法が考えられます。
水の蒸発のためには膨大なエネルギーを必要としますが、中間熱交換器を利用することでエネルギーを10分の1程度まで減少させることの可能性があります。

オゾンを用いる方法と蒸発濃縮法については節を改めてお話いたします。
by masaaki.nagakura | 2011-04-01 08:55 | 想うこと