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想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (13)放射性物質の環境放出は今後どうなるか
1.大気中への放射性物質の放出
東北、関東地域で計測される放射性物質の量は福島第一原子力発電所の水素爆発のころに急速に高まっていたのが、現状では減衰傾向にあるということでこれはひとつの安心材料です。何らかの経路で(多分格納容器へ漏れ、そしてベント弁を通じて)原子炉建屋内に放出され、それが爆発したものです。
2号機原子炉建屋では大きな爆発が起こらなかったのは、早期に起こった1号機の原子炉建屋の爆発で2号機原子炉建屋の壁に大きな孔があき、そこから水素が逃げたためと考えられます。
各原子炉の燃料棒のジルカロイー水反応は地震による原子炉の停止後、1日~2日程度の間に起こり、その時点で殆どの燃料棒の上部は破損し、燃料棒内の揮発性放射性物質(ヨウ素、セシウム、ストロンチウム)および気体状放射性物質(キセノン、クリプトン、トリチウム)は大部分が圧力容器内に放出され、それが水素と一緒に外部に放出された可能性が高いと思います。 水素爆発が続いたあとに東北、関東各地の放射性物質量が減少しているのは、水素爆発以降に新たに大気中に放出されている放射性物質は少ないからと見られます。
それでは今後は放射性物質は減少し続けると期待して良いのでしょうか。
次の2つの状態が継続できればそれを期待してよいと思います。
①1、2、3号機の圧力容器内の(すでに破損した)燃料集合体の安定した冷却
②1,2,3,4,5,6号機および共用プールの燃料集合体の安定した冷却

現状では上記2つの状態は何とか保持されているようですが、この状態は非常に長期に亘って継続する必要があり、慎重に確実な戦略を立てつつ、挑戦し続けなければならない重要課題です。

2.海洋への放射性物質の放出
大気中への放出は減少しつつありますが、海洋への放出は増大しつつあります。
これは主に次の2つの理由によると考えます。
①燃料集合体冷却のための補給水が原子炉の系統機器(タービン、復水器、ポンプ、配管系統)を満たし、更に溢れて、原子炉建屋、タービン建屋に流れ、更にそれらから溢れて海洋に注いでいる。
②復水器等海洋に配管系統が繋がっている機器内に破損が起こり、そこから燃料集合体冷却のための補給水が海洋に流れている。

現在海洋に大量のヨウ素が流れ込んでいて、まだその経路がわかっていないと言う事です。確実とは言えませんが上記②の経路である可能性があります。もう実施しているかも知れませんが、その可能性を考慮した綿密な経路調査をして頂きたいものです。
なお、原子炉から放出される水に含まれているのはヨウ素やセシウムだけでなく、ウランやプルトニウムそしてあらゆる核分裂生成物です。それは燃料棒が破損しているので、その中の燃料ペレットが水中に剥き出しになっていて、しかもその燃料ペレット(2酸化ウランが主で、核分裂生成物を含む)の一部は微粒子状になって水中に入り込むからです。

現状では海洋への流出を止めるためにタンク、タンカー等への水の保管等の考えが出されていますが、一時貯蔵的な考え方はいずれも長期的には成り立たないものです。」
前節に記したようにすでに福島第一原子力発電所内に蓄積し、これからも増大し続ける放射性物質を含んだ水に対する放射性物質の除去が不可欠であり、一刻も早くその方策検討をして、実施に向けて取り組んで貰いたいと思います。

フランスより放射性物質除去の専門家を招いたと言う事でこれは歓迎すべきことですが、放射性物質の除去技術については日本にも多くの有能な人材と企業があります。
政府、東京電力はそれら日本の人材と企業を有効に生かす体制作りを進めて貰いたいと思っています。
by masaaki.nagakura | 2011-03-31 08:00 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (12) 緊急に必要な放射性物質除去システム
前節において福島第一原子力発電所全体で現状において冷却に必要な水量が使用済燃料一時保管プール全体(1,2,3,4号機プールおよび共用プール)で1日222トン、原子炉全体(1,2,3号機合計、4号機は炉内に燃料なし)で1日1000トン(1号機200トン、2号機、3号機各400トン)と推定しました。
これらの水量はそれぞれの発熱量を水の蒸発熱に換算した水量です。
私は現在実際にどの程度の水量が補給されているのか把握していませんが大体この程度かと考えています。
(使用済燃料一時保管プールからの放熱、原子炉からの放熱を考えるとこれより少なくても済むかも知れませんが、その辺の詳細な事情はわかりません.
なお、3月30日の毎日新聞の朝刊によると1号機では注水量113l/minでは温度が300℃に上昇したため、141l/minにして安定したと記事があります。113l/minは1日163トン、141l/minは1日203トンです。ですから1号機で1日200トン程度という私の推定は大体当たっているようです。)

さて、これから話す事はこれらの水量の正確性にはあまり関係のない問題です。
それは水量のバランスの取りかたの困難性です。
使用済核燃料プールにおいても、原子炉においても同じ事ですが、補給水が少なすぎると燃料集合体の水面上への露出という最悪の状態となり、補給水が多すぎるとそれは外部にあふれて建屋内の放射性物質の量の増大と同時に放射線量の増大を招くと言う事です。
東京電力は原子炉において丁度蒸発量に見合う程度水量を入れるように試みたようですが、原子炉の設計最高温度以上に温度が上昇し、再びより多くの水を注入して温度を下げたように報道されているようです。
これは例えば料理で長時間の煮込みをするのに水の補給をするような話です。鍋のなかの水位を丁度良く保つには時々鍋の中を見て、丁度良い高さまで水を補給する必要があります。補給する量が少なすぎると焦がしてしまい、多すぎると水が鍋の外に溢れてしまいます。
鍋の場合には蓋を開けて水位を見れますが、現在の福島第一原子力発電所の原子炉の場合は水位が見えないと言うところに大きな問題があります。水位が把握されているならば、適当な水位になるように水を加えていけば良いのですが、水位が見えないために温度で見るしかない状態のようです。
この状態で蒸発量に見合うだけの水量を注入することは殆ど不可能で、水位の上昇と下降の繰り返しを招き燃料集合体の水面上への露出を更に拡大するリスクが高いのです。したがって水量は多めに注入し続けるしかありません。これは鍋の中の煮物を焦がすよりはまだ水を溢れさせた方が良いというようなものです。
現在の燃料集合体の発熱量はまだ大きくわずかな時間(1時間以内と推定しています)水面上に露出しただけで900℃以上に昇温しジルカロイ-水反応を招き、燃料集合体の内部の核燃料を炉内に露出し、炉内の水中の放射性物質量を増大させ、その放射性物質はやがて原子炉の外部に放出される予備軍に加えられます。
わずかな時間でも燃料集合体の水面上露出部が増えないようにするためには補給水は多めに加えざるを得ません。
そして多めに加える以上は原子炉内の放射性物質を含んだ水が原子炉系統(原子炉、タービン、復水器、ポンプ等を含む)から外部に出てきます。

以上は私の言いたいことの前段階の話です。私がこの節で言いたいことの結論は表題に記したようjに「福島第一原子力発電所のサイト付近における放射性物質除去システムの構築が緊急の課題である」と言う事です。これまでの話からそれを明確に認識していただいた方もあるでしょうか、本当にそこまで必要なのか、あるいは必要かも知れないが、どうだろうと疑問を持つ方もおられると思うので更に必要な理由についての話を進めます。

さて先ず現状において明確に認識しなければならないことは以下です。
①燃料集合体の水面上の露出を避けるために原子炉への水は多めに補給せざるを得ない。
②原子炉への水を多めに補給する以上放射性物質を多量に含んだ水が原子炉系統外に溢れる。
③その結果福島第一原子力発電所の内部および周辺の放射性物質量および放射能は高くなる。
④強い放射線の中での作業は困難(長時間作業は不可)であり、原子炉系統の修復はますます困難になる。

次に放射性物質を多量に含んだ水はどうしたらよいのでしょうか。
一番望ましいのは原子炉の系統が回復し、循環式の冷却が出来る事です。そうすれば補給水も必要なくなり根本的な解決に近づきます。
しかし、原子炉の系統は1,2,3号機ともに外部に通じる破損部分があるようです。破損部分はタービン、復水器、循環ポンプ、配管系統のいづれかでしょう。恐らく地震直後の原子炉の自動停止、循環ポンプの停止時に系統全体の圧力が非常に高くなり、ある部分で設計圧力を大幅に超えて破損したと推定してます。
因みに原子炉は16cmの鋼鉄で耐圧が保たれる構造ですが、系統全体はそのような耐圧仕様にはなっていないと思います。通常時の原子炉冷却水の循環が停止すると、原子炉内の圧力は系統機器全般に伝達して(パスカルの原理です)その圧力に耐えられない部分は破損します。
そして破損して部分の修復は建屋内の強い放射線のために殆ど不可能な状態です。
と言う事は現状の放射線量では原子炉の系統の回復は望めないということです。

現状では、原子炉への水の補給は継続せざるを得ず、その結果オーバーフローする放射性物質を多量に含んだ水を何とかしなければなりません。

オーバーフローする水の処理の仕方として次の選択のオプションがあります。

①放射性物質を含んだオーバーフロー水(以下水と略)を現状のまま放置する。
②水をくみ上げて海洋に放出する。
水をくみ上げて極力放射性物質を除去して海洋に放出する。
④水をくみ上げて復水器等の建屋内機器に貯蔵する。
⑤水をくみ上げて搬送し、別のタンクに保管する。
⑥水を補給水として原子炉に再循環する。
⑦水の放射性物質を極力除去して別のタンクに保管する。
水の放射性物質を極力除去して補給水として原子炉に再循環する。(注*)
水の放射性物質を極力除去して別のタンクに保管し、一定期間保管して残存する放射性物質の減衰を待って海洋放出する。

(注*原子炉へ補給水として再循環する場合には熱の除去が必要であり、その循環系統の中に熱交換器のような機能を持つものを備える必要はあります。)
上記で①は放射性物質の蓄積を招くばかりなので採用できないでしょう。
②は緊急手段としては選択の必要はあるかも知れませんが、恒久的な手段にはなりません。
③はひとつのありえる手段です。
④はあくまでも一時的なものです。それに大容量の復水器(容量は1号機で1600トン、2号機、3号機で3000トンと報道されています)があるといっても、これまでに原子炉に補給した水のかなりの部分は復水器中にあるようです。報道によると東電の計画では「現在2号機、3号機の復水器には水があるのでその水は別のタンクに移して復水器にオーバーフロー水を入れる」ということですが、復水器の水は原子炉から来たものでやはり放射性物質を含んでいると思われるので、このような移し変え操作が意味あるのかは疑問です。
⑤はそのようなタンクガ実際にあるのか、あったとしても高濃度の放射能を持った水をどのように移送するのか、移送したあとの周辺の放射線管理をどうするのか、と言う問題があります。更にそれらの問題を解決出来るタンクがあるとしても、水はどんどん発生するのでタンクの数を増やし続けなければならない事になります。
一時的にはともかく長期的には非現実的です。
⑥は可能と思いますが、その場合は循環する水の放射線量はどんどん高まる方向に行くので、その循環系統(ホース、ポンプ)等の放射線管理の問題が生じると共に、建屋内の放射性物質量、放射線量の高まり続けることになります。
⑦は可能ですが、⑤と同様にタンクを増やし続けねばなりません。
⑧は可能なひとつの選択支と思います。
⑨もひとつの可能な選択支でしょう。

上記より一時的な処置はともかく、長期的には③⑧⑨のいずれかだと思います。
いずれにせよ放射性物質の除去システムの構築が求められると言う事です。
by masaaki.nagakura | 2011-03-30 06:47 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (11)炉心冷却と放射性物質漏洩の矛盾
福島第一原子力発電所において現在最も問題となっている二つの課題は次です。
課題1.炉心及び使用済燃料一次保管プールを冷却する。
 必要理由:もし冷却しないと炉心溶融、使用済燃料の破損(ジルコニウム-水反応)を引き起こし、それは更なる放射性物質の環境放出を招く。

課題2.放射性物質の拡散を防ぐ。
 必要理由:もし防がないと放射性物質による被害がより広範囲に拡大する。

この二つの課題を両立させることは現状では極めて困難です。
その理由を以下に説明します。

課題1を実施するには外部から炉心及び燃料集合体一次保管プールへの冷却水の注入が必要です。
しかし、注入された水は原子炉の系統(圧力容器、タービン、復水器を含む)の受容能力を超えた時点で再び外部に出てきます。その外部に出る形は水蒸気か液体の水です。
水蒸気として放出された場合にはその水蒸気はヨウ素、セシウム等の揮発性の高い放射性物質を同伴するためにそれらの大気への拡散を招きます。
水として放出された場合にはそれは揮発性の高い放射性物質のみならず、ウラン、プルトニウム及びあらゆる核分裂生成物を伴って出てきます。それらの水は原子炉の系統の破損部分から流出して格納容器、原子炉建屋、タービン建屋のいずれかに溜まるか、海洋に放出(*)されます。
格納容器、原子炉建屋、タービン建屋のいずれかに溜まった分もやがてそれらの容量が満杯になると外部に溢れ出てきます。
以上の事から課題1を実行することは必然的に課題2を困難にします。
しかし、だからと言って課題1をやめるわけには絶対にいかないのです。もし課題1の実行を放棄したら、一層課題2の解決を困難にするからです。
(注*海洋に放出されるルートは建屋からあふれでる以外に復水器からのルートがあり得ます。復水器は平常時にはタービンから出てくる水蒸気を海水で冷却して水に戻す1種の熱交換器ですが、地震での原子炉停止後に平常時にはない高圧にさらされて破損した可能性があり、原子炉に注水中の水がそこから海洋に流出している可能性があります。)

現在進行しているのは上記の根本的な矛盾を秘めた現象です。この矛盾を正しく捉え、英知を集めて対処しない限り、被害は拡大の一方を辿るしかありません。
この解決策に関しては後に論じたいと思いますが、ここではこの矛盾についてやや数量的な話をします。

先ず冷却に必要な最低限の水量がどの程度かです。

1.使用済燃料一次保管プール
 これは前節にも記したように概略以下です。
これは各プールでの発熱量を水の蒸発熱として除去すると想定したものでほぼ限必要な水量と言えるでしょう。合計では1日222トンになります。

 1号機:2.7トン/日
 2号機:18トン/日
 3号機:9トン/日
 4号機:89トン/日
 5号機:31トン/日
 6号機:27トン/日
 共用プール:45トン/日
合計:222トン/日

2.原子炉

 以下は原子炉内の核燃料の崩壊熱が全て水の蒸発に使われたとした場合の1日あたりの蒸発量を示すものです。 大震災から1年後までの値を示しています。
 なお発熱量の元データはMITの原子力理工学部のホームページ公開データを採用しています。
 この蒸発量に見合う程度の水の補給が必要です。
 現状で必要な水量は1号機が1日200トン、2号機、3号機が各400トンで合計1000トン程度です。
 必要な水量は時間と共に減少するものの1年後でも1号機毎日100トン、2号機及び3号機は各200トン、合計では500トン程度の水を必要とします。
(2011年4月9日追記:4月始め頃の報道では1号機が1時間に6トン、2号機が8トン、3号機が7トンの水を注入しているようです。これは1日あたりでは1号機が144トン、2号機が192トン、3号機が168トンの水を注入していることになります。下記の計算では4月1日の時点で1発熱量に見合う蒸発水量が1号機が199トン、2号機と3号機が337トンです。 発熱量の一部が圧力容器からの放熱により失われ、残りが水の蒸発に使われ、現在その水の蒸発分を補給していると考えれば納得は出来ます。ただし、MITの原子力理工学部が掲載した原子炉の発熱量のデータの精度の問題も含まれているかも知れません。)

(1)1号炉 

日時          発熱量に見合う蒸発水量
                トン/日
2011/3/11 14:46 3.52E+03
2011/3/11 14:47 1.71E+03
2011/3/11 14:48 1.41E+03
2011/3/11 14:50 1.20E+03
2011/3/11 15:00 9.22E+02
2011/3/11 15:30 7.31E+02
2011/3/11 20:00 4.90E+02
2011/3/12 8:00  3.86E+02
2011/3/12 20:00 3.48E+02
2011/3/13 20:00 3.25E+02
2011/3/14 20:00 2.98E+02
2011/3/16 20:00 2.64E+02
2011/3/20 20:00 2.33E+02
2011/4/1 20:00  1.99E+02
2011/7/1 20:00  1.42E+02
2011/10/1 20:00 1.26E+02
2012/3/11 20:00 1.11E+02


(2) 2号炉、3号炉 (2号炉と3号炉はほぼ同一の発熱量です)
日時           発熱量に見合う蒸発水量
               トン/日
2011/3/11 14:46  6.00E+03
2011/3/11 14:47  2.92E+03
2011/3/11 14:48  2.40E+03
2011/3/11 14:50  2.05E+03
2011/3/11 15:00  1.57E+03
2011/3/11 15:30  1.24E+03
2011/3/11 20:00  8.38E+02
2011/3/12 8:00   6.62E+02
2011/3/12 20:00  5.93E+02
2011/3/13 20:00  5.55E+02
2011/3/14 20:00  5.05E+02
2011/3/16 20:00  4.52E+02
2011/3/20 20:00  4.02E+02
2011/4/1 20:00   3.37E+02
2011/7/1 20:00   2.41E+02
2011/10/1 20:00  2.14E+02
2012/3/11 20:00  1.91E+02


以上のように特に原子炉は膨大な冷却水量を必要とし、それがまた水蒸気もしくは液体の水として放射性物質を同伴して外部に出てきます。


現在の状況について各方面の報道から推定すると、使用済燃料一次保管プールの水は補給により何とか、燃料棒の水上露出という事態には至っていないようです。
原子炉については海水より真水に切り替えての冷却が進行しているようですが、注入している水のうちの一部は水蒸気として、格納容器へ、そしてベント弁を通じて外部に放出され(これは原子炉内の圧力を高めないために人為的に行われているようです)、残りは水として格納容器や復水器にたまり、あるいはタービン建屋で配管もしくは機器の破損した部分から建屋内に漏出し、その一部は既に溢れて海洋に漏出しているようです。またこれは私の推定ですが、前記の注*のように復水器はその一部に破損が生じて、原子炉に注入した水の一部がそこから直接海洋に流出している可能性があります。

この状態が継続すると大気中と海洋の汚染は拡大を続け、同時に原子炉建屋、タービン建屋の周辺は放射能を含んだ水で次第に浸漬されて近寄るのも困難な状況が生まれ、対策は更に困難になるという悪循環に陥る可能性が高いのです。

この状況が大地震という天災に引き起こされたとは言え、ここまでを想定していなかった東京電力にも責任はあるでしょう。 しかしこの状況は既に東京電力1社の解決能力を超えた段階に突入しつつあります。
また、この被害は全国民に及びつつあり、既に国難というべき段階です。

この状況を真っ直ぐに見て、衆知を集めて根本的な解決策を探り、着実に実行していくのが国家としての道と思います。
国が原子力に詳しい学者集団を集めて、戦略を練ることを開始するというような報道がありました。
これはないよりは良いでしょうが、これでよい解決策が見出されるとは思えません。

国は学者のみならず、東京電力、原子力各社、既に引退した原子力技術者、その他放射能除染技術に係る各社のブレインを集めた総力体制を早急に構築し、この非常の事態の解決に向かうべきである、というのが私の考えです。
by masaaki.nagakura | 2011-03-29 08:39 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える(10) 中間まとめ(使用済燃料、水素爆発など)
ここまでは主に使用済核燃料一時保管プールの冷却と水素爆発の経緯についての推定を行なってきました。
ここではそれを要約します。

1. 使用済核燃料一時保管プール

 福島第一原子力発電所の使用済核燃料一時保管プールは1~6号機の各プールおよび共用プールの7箇所があり、それぞれのプールに保管している燃料集合体の発熱量および数量は以下の状況です。
1号機: 6万キロカロリー(燃料集合体292体)。 
 2号機: 40万キロカロリー(587体)。
 3号機: 20万キロカロリー(514体)。
 4号機: 200万キロカロリー(1331体)。
 5号機: 70万キロカロリー(946体)。
 6号機: 60万キロカロリー(876体)。
 共用プール:100万キロカロリー。

「4号機で使用済核燃料の上部が水面から露出し、水素が発生し、それが4号機での爆発を発生させた可能性がある」との報道がされましたが、上記の発熱量およびプール水量からしてその可能性は極めて低いと推定しました。

しかし使用済核燃料一時保管プールを冷却せずに放置した場合には早晩使用済核燃料の上部が水面から露出し、ジルカロイー水反応により燃料棒は破損し、水素が発生するのみならず、燃料棒内に閉じ込められていた放射性物質(ヨウ素、セシウム、ストロンチウム、トリチウム、キセノン、クリプトン等)が大気中に飛散する可能性が大きいです。
通常時に働いているプールの冷却系が復活すが問題ないのですが、それが復活できない場合には代替の冷却系を用意する必要があります。
しかしそれには時間がかかるかも知れません。 応急的には現在までやってきたように外部から水を補給するしかないと思います。
各プールでの発熱量から評価すると次の水量で水を補給する必要があります。

 1号機: 6万キロカロリー   ⇒111 リットル/時間=2.7トン/日
 2号機:40万キロカロリー   ⇒740 リットル/時間=18トン/日
 3号機:20万キロカロリー   ⇒370 リットル/時間=9トン/日
 4号機:200万キロカロリー  ⇒3700リットル/時間=89トン/日
 5号機:70万キロカロリー   ⇒1300リットル/時間=31トン/日
 6号機:60万キロカロリー   ⇒1111リットル/時間=27トン/日
 共用プール:100万キロカロリー⇒1850リットル/時間=45トン/日

この場合プールの水の温度は100℃で保持される事になります。
もし100℃以下で保持する必要がある(私にはその必要があるか否かは判断できません)とするとこれ以上の水を補給する事になりますがその場合水を供給するだけではプールの水があふれることになります。プールの水があふれ出ると、復活させようとしている電気系統に障害を与える可能性があるかも知れません。それを避けるには使用済核燃料一時保管プールへの水の供給と同時にそこからの水の排出の工夫が必要となります。

2.福島第一原子力発電所での水素爆発への経緯
ジルカロイー水反応で発生した水素量は1号機の燃料集合体の露出水位1.7mの時で3800m3(標準状態)、3号機の燃料集合体の露出水位2.95mの時で9800m3(標準状態)と推定しました。
1号機において水素の発生は格納容器の圧力を低下させるために格納容器から原子炉建屋につながるベント弁を人為的に開放するまでは起こっていないと推定しました。
ベント弁を開放後に圧力容器内の水位が急速に下がり、それにより燃料集合体が水面上に露出し、ジルカコニウムー水反応が起こり、水素が発生し、それが水蒸気と一緒に圧力容器から格納容器へ、更にベント弁を通じて原子炉建屋に流出し、原子炉建屋の天井部に蓄積し、水素濃度の爆轟条件18.3%以上になり、静電気火花等により爆発にいたったと推定しました。
by masaaki.nagakura | 2011-03-27 09:36 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える(9) 1号機で水素爆発へいたる経過
東日本大地震の発生時刻は3月11日14時46分で福島第一原子量発電所の原子炉自動停止の時刻は3月11日14時48分頃のようです。 そして福島第一原子量発電所の1号機の水素爆発は3月12日15時30分、3号機の水素爆発は3月14日11時8分と報道されています。
1号機は停止後24時間と42分で水素爆発に至り、3号機は68時間20分で水素爆発にいたっています。

1号機が水素爆発にいたるまでの経緯をたどってみます。
原子炉建屋内に水素が放出されるは3月7日9時7分に格納容器のベント弁(外部に気体を逃がす弁で格納容器と原子力建屋がの間にあると考えられる)が開放されて以降と考えられます。
しかし、ベント弁が開放された時点では水素は殆ど発生してなくて、ベント弁から放出されたのは殆ど水蒸気のみであったと考えられます。
ベント弁の開放により、圧力容器内の水蒸気が圧力の下がった格納容器に放出され、圧力容器内で沸騰速度が速まり、一層水位が低下し、その結果燃料棒が水面上に露出し、ジルコニウムー水反応が起こり、その水素が格納容器へ、更にベント弁を通じて原子炉建屋に流出し、水素爆発にいたったと考えられます。

次のそのように推定する理由をやや詳細に記します。
緊急対策本部・原子力災害対策本部の発表では3月12日4時にドライエウエル(原子炉格納容器の一部)の圧力が約8気圧に上昇し、その圧力を下げるために9時7分にベント弁を開放、その後10時4分に燃料棒の上部50cmが水面上に露出したとあります。 燃料棒の上部50cmの水面上露出ではまた殆ど水素の発生は無い状態です。 ですからベント弁の開放を開始した時点での原子炉格納容器の内部には水素は殆ど無く、8気圧の気体は殆どが水蒸気であったと考えられます。
因みに8気圧というのは水温が170℃の水の飽和蒸気圧です。
格納容器の体積は5600m3ということです。 この中に170℃、8気圧の水蒸気(密度約3.8kg/m3)が充満しているとその量は21トンです。節(6)で燃料棒が露出するまでに圧力容器から120m3≒120トンの水蒸気が排出されたと推定しました。 格納容器に水蒸気となって放出された21トンはその120トンの一部であり、他の100トン程度はタービンと復水器あるいは原子炉格納容器の圧力抑制室に液状水となって蓄積したと考えられます。

水素が発生するのはベント弁を開放した後、圧力容器内の水の水位が下がってからです。
緊急対策本部・原子力災害対策本部の発表では3月12日11時20分には燃料棒の上部90cm、12時5分には上部150cmが水面上に露出します。この間に猛烈なジルカロイー水反応が起こり、大量の水素が発生したはずです。 前節と同様の推定方法によると150cmの露出部の被覆管の燃料ペレットが存在する部分は110cmでその部分の被覆管がジルコニウム-水反応を起こして発生する水素の量は3200m3(標準状態)です。 この水素量は170℃で8気圧では650m3です。
一方水位が燃料棒の上面から150cm水上露出にいたるまでに蒸発する水の量は圧力容器の内径4.8mとして27m3≒27トンです。 これは170℃で8気圧の水蒸気(密度約3.8kg/m3)としすると体積は7100m3です。 おおよそ650m3の水素と7100m3の水蒸気が同時に格納容器内に放出し更にそこからその一部がベント弁に放出されて行ったと推定されます。
格納容器内の体積は前述のように5600m3ですがベント弁を開く前にその分の水蒸気が格納容器内に存在し、更にそれに650m3の水素と7100m3の水蒸気が加わり、あわせて650m3の水素と12700m3の水蒸気(温度170℃、圧力8気圧)の計13350m3が圧力容器内より格納容器中に放出されたことになります。
ここで水素の全体放出気体量に占める比率は4.86%です。
ここで格納容器中に残る気体とベント弁より原子力建屋に放出された気体の中の水素の比率が同一と仮定します。 すると水素はベント弁より放出された気体7750(13350m3-5600m3)の4.86%、すなわち377m3(170℃ 8気圧)となります。この量は標準状態(0℃、1気圧)では1860m3となります。

以上の推定を要約します。
「1号機においては水素爆発に先立つ、ベント開放中におおよそ3200m3(標準状態)の水素が圧力容器から格納容器に漏洩し、更にそのうち1860m3(標準状態)がベント弁を通じて原子力建屋に漏出した。」

さて格納容器よりベント弁を通じて原子炉建屋内に放出された水素と水蒸気の混合ガスは速やかに原子力建屋の上方に向かい、上部に蓄積します。
その理由は高温で且つ空気に比して分子量の低い水素と水蒸気は、空気に対して比重が著しく小さいためです。
上方に向かいつつ、水蒸気は周辺の空気に冷やされて凝縮し、湯気となり、あるいは周辺の壁面や天上に付着します。 
こうして水蒸気が除去された高濃度の水素が天上付近に蓄積します。
水素は空気中の濃度が4%以上で爆発しますが、18.3%から59%の濃度で「爆轟」という激しい爆発現象を起こします。今回の爆発はその激しさから爆轟と考えられます。
水素量1860m3(標準状態)は20℃、1気圧では約2000m3です。
仮に今回の爆発が水素濃度20%で起こったとすると、10000m3の空間で爆発が起こったことになります。
建屋の寸法が解らないので正確なことはいえませんが、爆発の起こった空間は建屋の天上付近の下、数メートルの範囲だと推定されます。

ところで爆発には着火源が必要ですが、水素爆発の場合はごく小さなエネルギー(0.02MJ)の着火源で爆発が生じます。 パチっというような静電気の火花で十分です。
ですから爆ごうの水素濃度条件が揃えば、遅からず爆発は起こる事になります。

水素爆発、特に爆轟は2H2+O2⇒2H2Oと言う反応が着火点から連鎖的に超音速で周辺に伝播する事で起こります。 その伝播する先端部に衝撃波が生じ、その衝撃波が建物の壁や天上にあたるとすさまじい破壊力を生じます。
(爆発のエネルギーは水素1mol(22.4L標準状態)あたり57.9kcal=242kJです。
今回1号機で爆発して水素量が1860m3(標準状態)とすると、それは83040molですから481万kcal=2000万kJの爆発エネルギーと言うことになります。これは1000トンのものを2000mの高さに持ちあげるほどのエネルギーです。)
by masaaki.nagakura | 2011-03-26 09:22 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える (8)1号機と3号機のジルコニウムー水反応による水素発生量
福島第一原子力発電所の1号機は地震での自動停止の後、4時間程度で燃料集合体の上部が水面上に露出し、更に1時間以内にジルコニウムー水反応を開始したのではないかという推定を述べました。
ここではどの程度の水素が発生したかについて考えて見ます。

ジルコニウムー水反応の形態は次のように考えられます。

Zr+2H2O⇒ZrO2+2H2
あるいは
Zr+4H2O→Zr(OH)4+2H2
いずれにせよ、Zrの1原子が水と反応しH2(水素)2分子が出来ます。
あるいはZr 1molに対して水素ガス 2molが出来るのです。

計算では1号機の圧力容器内の被覆管全体で約21トンのジルコニウムがあります(いやありました。)
ジルコニウムの原子量は91.224ですから、21トンのジルコニウムは230kmol(21000÷91.224)です。
これが全て反応するとすれば水素460kmolが発生します。
これは標準状態(0℃、1気圧換算)の体積として10300m3に相当します。
これは最大です。 発生した水素はこのうちの一部ですがそれがどの程度かを推定します。

この推定は次の仮定で行います。
①全長4.35mの燃料集合体が水面上に露出したのは1.7m程度である。
(3月12日15時28分の時点で1.7mとの報道あり)
②燃料集合体の上部0.4mにはペレットが入っていない。
③燃料集合体でペレットの充填されている部分は3.5mである。
④ペレットの充填されている部分で水面上に露出した部分は全てジルコニウムー水反応を起こし、水没している部分ではジルコニウム-水反応は起こらない。

以上からべレット充填部の水面上に露出した部分は1.3m(1.7-0.4)であり、それはペレット充填部全体の長さ3.5mの37%です。従って水素発生量は10300m3の37%、すなわち3800m3です。

次に3号機ですが3号機は内装されたウラン量が94トンで1号機のウラン量69トンの1.36倍です。
上記の1号機に比してジルコニウム量も1.36倍の29トンと概算されます。
またジルコニウムの全量反応時の水素発生量も1号機の1.36倍の626kmol=14000m3(標準状態)となります。

水素発生量は次の仮定で推定します。
①全長4.47mの燃料集合体が水面上に露出したのは2.95m程度である。
  (3月13日7時30分の時点で2.95m露出と報道あり)
②燃料集合体の上部0.45mにはペレットが入っていない。
③燃料集合体でペレットの充填されている部分は3.5mである。
④ペレットの充填されている部分で水面上に露出した部分は全てジルコニウムー水反応を起こし、水没している部分ではジルコニウム-水反応は起こらない。

以上からべレット充填部の水面上に露出した部分は2.5(2.95-0.45)であり、それはペレット充填部全体の長さ3.5mの71%です。従って3号機における水素発生量は14000m3の70%、すなわち9800m3です。
by masaaki.nagakura | 2011-03-23 20:04 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える(7)1号機の燃料集合体の水面上露出部が900℃に至る時間
1号機の燃料集合体の上部が圧力容器内の水から露出したときに、どの程度の時間でジルコニウムー水反応(水素発生反応)の生じる900℃に至るかを推定します。
水面から露出した燃料集合体は極めて伝熱の悪い状態となり、そのうちの放射性核分裂生成物の崩壊熱の大部分が燃料集合体そのものの昇温に振り向けられます。
この昇温現象は①燃料棒の中で二酸化ウランペレットが温度上昇し ②被覆管が温度上昇 ③燃料集合体を支持する金属構造物の温度上昇 ④制御棒等にそのた炉内構造物の温度上昇 ⑤圧力容器の温度上昇 という段階をたどります。 特に水素発生が問題となるのは②の段階です。
二酸化ウランペレットは直径11mm高さ11mmで、被覆管は内径10.8mm、外径12.5mm程度で二酸化ウランペレットの周囲を取り巻いています。
この二酸化ウランペレット1個と被覆管11mm(二酸化ウランと同じ高さ)の部分の比熱を計算すると0.71cal/℃程度です。 燃料集合体の上部が水面上に露出した状態での温度を300℃とし、それが900℃に到達するには二酸化ウランペレット1個当たりで420calが必要ということになります。

ここで二酸化ウランペレット1個からの崩壊熱を計算すると燃料集合体が水位から十分に露出していると推定される停止後1日経過しても1000cal/hr程度の崩壊熱を持っております。
すなわち「燃料集合体が水面から露出すると1時間以内に900℃以上に達して、ジルコニウムー水反応が起こり水素が発生する」という推定となります。
by masaaki.nagakura | 2011-03-23 13:06 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える(6)1号機の燃料集合体の水面からの露出に至る時間
追記2(5月22日):東電が5月16日に公表した資料では3月12日朝には燃料の大半が溶け落ちていたとの暫定評価を下しているとの報道(5月21日東京新聞)がありました。
ということは下記の追記1の「燃料集合体の上部50cmが露出するのは3月12日10時4分」というのは間違い(計器の誤差によるか?)であるということで、私の計算した原文の4時間程度で燃料集合体の上部が露出というのは満更おかしいものでもないということになります。
3月12日の朝というのは何時かわかりませんが、仮にそれを午前8時とすると地震の発生から15時間余です。
それまでに燃料集合体の全体が露出し、ほぼ全体が溶融していたということはうなづけます。

追記1(3月27日):以下の原文(3月23日記)は1号機の燃料集合体の上部が停止後水面上に露出するまでに4時間程度と推定したものです。しかし、実際には燃料集合体の上部50cmが露出するのは3月12日10時4分です。すなわち1号機の停止(3月11日14時48分頃)から19時間16分を経過しています。この大幅な相違は何によるものでしょうか。
以下の評価は燃料集合体の発熱が全て水の蒸発に費やされていると前提していますが、実際には圧力容器から外部への放熱に費やされた部分があり、それを評価に加えていません。また水量の仮定などに実際との相違があるのかも知れません。その意味で以下の推定は正しいとはいえませんが、今後に修正の機会もあると期待し、残しておきます。(3月27日記)

(原文)
次に地震で福島第一原子力発電所が自動停止してから、その圧力容器内の燃料集合体が水面から露出するまでの時間を推定します。
  圧力容器内の体積は前記の340m3程度です。 沸騰水型軽水炉の圧力容器は通常の運転状態では全てが水で満たされているわけではなく、上部は水蒸気になっています。 仮に圧力容器内の水量を
圧力容器内の容積の3分の2程度とすると230m3となります。 地震発生の後自動停止した時の圧力容器内の水量はその程度と推定されます。自動停止後には停電で冷却水の循環ポンプが作動せず、外部からの水の供給は絶たれます。 すると直ちに圧力容器内の水の沸騰が起こり、発生した水蒸気は凝縮器(Condenser:海水で冷却された熱交換器で水蒸気を凝縮し水に戻す役割をする。通常時はこの凝縮器に水蒸気が吸い取られるためにタービンは回ります)に至ります。このルートは平常時に圧力容器で発生した水蒸気がたどるルートと同様です。 循環ポンプが回っていないのにこのように水蒸気が凝縮器にいたると推定するのは、循環ポンプが停止してもしばらくは凝縮器が海水で冷やされており凝縮能力を失わないと考えられるからです。
 さて燃料集合体中の核燃料物質の崩壊熱は燃料集合体が水に浸されている限りは大部分が液体の水を水蒸気に変えるのに使われます。
 1m3の水が蒸発するにはおよそ54万キロカロリーを必要とします。
 私は現状では圧力容器中での燃料集合体の上部の高さは把握していませんが、それが仮に圧力容器の高さの3分の1程度であるとすれば、燃料集合体の上部が露出するのは圧力容器内の水量が110m3程度に減少したときで、元の水量230m3から120m3の水が水蒸気になって排出されてしまったときだと言うことになります。 120m3の水の蒸発には6480万キロカロリーを必要とします。
 上記(1)の崩壊熱に関するデータによれば5時間14分でtotal9120万キロカロリーの崩壊熱発生しているわけですから、1号機の停止後およそ4時間程度で燃料集合体の上部が水面上に露出したのでないかと推定されます。 使用したデータの精度が不確かであり、4時間程度と言うのはひとつの推定値に過ぎないのですが、参考にはなると思います。
by masaaki.nagakura | 2011-03-23 12:51 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える(5)水素爆発へのプロセス
福島第一原子力発電所の1号機と3号機で水素爆発が起こり、建屋が破壊されました。
どうしてこのようなことになったのでしょうか?
また今後どうなるのでしょうか?
この辺を考えて見たいと思います。
先ずどうしてこのようになったのか、ということです。
先ず水素爆発の原因となった水素は使用核燃料一時保管プールからの発生したのではないことは、水素爆発の生じた時点で、それらのプールの燃料集合体が水から露出していなかった事から推定できます。
したがって水素の発生源は原子炉の圧力容器の内部の集合体からであることは確かといえるでしょう。
そして水素の発生と爆発は次のプロセスの進行により生じたと考えられます。

① 地震による原子炉の自動停止
  :自動的に燃料集合体間に制御棒が挿入され核分裂反応が停止する。
② 停電と非常電源故障による圧力容器内の燃料集合体に対する冷却機能の喪失
  :平常運転時用冷却系と緊急炉心冷却系の双方の系統が働かない。
③ 燃料集合体の温度上昇
  :燃料集合体の中の核分裂生成物の崩壊熱にて温度が上昇する。
④ 核燃料集合体上部のの冷却水からの露出
  :圧力容器内の冷却水が沸騰して核燃料集合体上部が水から露出する。
⑤ 燃料集合体の上部の900℃以上の温度上昇
  :燃料集合体の上部が水から露出する事により一層の温度上昇があり、900℃以上にいたる。
⑥ ジルコニウムー水反応による水素の発生
  :燃料集合体を形成する燃料棒の被覆管の材料であるジルコニウムが水蒸気と反応し水素を発生。
⑦ 水素の原子炉建屋内への漏出
 :上記⑥で発生した水素が何らかの経路により原子炉建屋内に漏れ出す。
⑧ 原子炉建屋の一部(多分上部)での水素濃度の増大
 :上記⑦で漏出した水素は建屋の一部に蓄積し、その部分の水素濃度が増大する。水素は空気に比して著しく軽いので建屋の上部に蓄積した可能性が高い。
⑨ 水素爆発
 :水素の建屋内の一部の濃度が水素が激しい爆発を起こす4.65%(体積比)以上に到達し、且つ何らかの着火源が存在して爆発を起こす。
⑩ 原子炉建屋の破壊
 :上記⑨の爆発により原子炉建屋が殆ど鉄骨を残すのみになるまで破壊する。

以上は地震より水素爆発と原子炉建屋の破壊に至るまでのプロセスを追ったものですが、この現象をやや定量的に捉えてみたいと思います。

燃料集合体が水面より露出したのはその崩壊熱によるものです。
そこで先ず核分裂生成物の崩壊熱がどの程度かと言う事から見ていきます。
MIT原子力理工学部が計算した崩壊熱の値は以下です。
(この計算では原子炉の停止時刻を3月11日午後2時46分としているようで、一方東京電力の発表は3月11日午後2時48分としており若干の相違がありますが、以下の検討にはその相違はあまり関係がありません。)

(1)1号機の崩壊熱(単位MW、キロカロリー/hr)
   (totalの値はその時間までの放熱量の全量を概略計算したものです)
 停止直後:92MW=7900万キロカロリー/時間
 1分後  :44.7MW=3850万キロカロリー/時間(total98万キロカロリー)
 2分後  :36.9MW=3180万キロカロリー/時間(total156万キロカロリー)
 4分後  :31.4MW=2700万キロカロリー/時間(total254万キロカロリー)
 14分後 :24.1MW=2080万キロカロリー/時間(total652万キロカロリー)
 44分後 :19.1MW=1640万キロカロリー/時間(total1582万キロカロリー)
 5時間14分後 :12.8MW=1100万キロカロリー/時間(total9120万キロカロリー)
 17時間14分後:10.1MW=870万キロカロリー/時間(total2億940万キロカロリー)
 29時間14分後:9.1MW=780万キロカロリー/時間(total3億840万キロカロリー)
 53時間14分後:8.5MW=730万キロカロリー/時間(total4億8960万キロカロリー)
 77時間14分後:7.8MW=670万キロカロリー/時間(total6億5760万キロカロリー) 
 125時間14分後:6.9MW=590万キロカロリー/時間(total9億6000万キロカロリー) 

(2)2号機および3号機の崩壊熱(単位MW、キロカロリー/hr)
 停止直後:156.8MW=1億3500万キロカロリー/時間
 1分後  :76.2MW=6560万キロカロリー/時間
 2分後  :62.8MW=5400万キロカロリー/時間
 4分後  :53.5MW=4600万キロカロリー/時間
 14分後 :41.0 MW=3500万キロカロリー/時間
 44分後 :32.5MW=2800万キロカロリー/時間
 5時間14分後 :21.9MW=1890万キロカロリー/時間
 17時間14分後:17.3 MW=1490万キロカロリー/時間
 29時間14分後:15.5 MW=1330万キロカロリー/時間
 53時間14分後:14.5MW=1250万キロカロリー/時間 
 77時間14分後:13.2 MW=1140万キロカロリー/時間 
 125時間14分後:11.8 MW=1020万キロカロリー/時間

以下では1号機についての推定をします。
1号機の主要な仕様は以下です。(主に東京電力資料による)

(3) 1号機の炉心の仕様
 ① 燃料集合体本数:400本
 ② ウラン量:69トン
 ③ 燃料被覆管材質:ジルカロイ-2
 ④ 8×8型燃料被覆管寸法:外径12.5mm、肉厚0.86mm
 ⑥ 8×8型燃料集合体中ウラン重量:約184kg
 ⑦ 核燃料集合体全長:4.35m
⑧ 燃料ペレット材質:二酸化ウラン
 ⑨ 燃料ペレット寸法:直径約11mm、高さ約11mm
 ⑩ 燃料ペレット密度:約95(%T.D)
 ⑪ 圧力容器内寸法:約4.8m×19m

解説:福島原子力発電所の原子炉は沸騰水型軽水炉(BWR:Boiled Water Reactor)と言われる型のものでその炉心の核燃料部は8×8型燃料集合体と7×7型燃料集合体から構成されているようです。8×8型燃料集合体は燃料被覆管が8列×8列で束ねられたものです。ここで燃料被覆管はジルカロイ-2という合金の管の内部に燃料ペレットが充填されたものです。ジルカロイ-2と言うのはWikipediaによるとジルコニウム98.25 重量%、スズ1.45%、クロム0.10%、鉄0.135%、ニッケル0.055%、ハフニウム0.01%からなる合金です。 燃料ペレットの密度の単位の(%T.D)言うのはその物質の結晶の密度(Theoritical Density)に対する比率です。 2酸化ウランの場合は理論密度が10.96g/cm3ですから95%T.Dは10.4g/cm3となります。

以上で1号機で水素発生が起こった経緯の推定に必要なデータは揃ってきました。
これらのデータの精度はわかりませんが大雑把の推定に使うにはそれほど問題が無いのでないかと思います。次節からはこれらのデータに基づき、1号機で水素発生が起こった経緯についての推定を行います。

推定1:反応容器内で水位が下がる速度
  圧力容器内の体積は上記の⑪より340m3程度です。 沸騰水型軽水炉の圧力容器は通常の運転状態では全てが水で満たされているわけではなく、上部は水蒸気になっています。 仮に圧力容器内の水量を
圧力容器内の容積の3分の2程度とすると230m3となります。 地震発生の後自動停止した時の圧力容器内の水量はその程度と推定されます。自動停止後には停電で冷却水の循環ポンプが作動せず、外部からの水の供給は絶たれます。 すると直ちに圧力容器内の水の沸騰が起こり、発生した水蒸気は凝縮器(Condenser:海水で冷却された熱交換器で水蒸気を凝縮し水に戻す役割をする。通常時はこの凝縮器に水蒸気が吸い取られるためにタービンは回ります)に至ります。このルートは平常時に圧力容器で発生した水蒸気がたどるルートと同様です。 循環ポンプが回っていないのにこのように水蒸気が凝縮器にいたると推定するのは、循環ポンプが停止してもしばらくは凝縮器が海水で冷やされており凝縮能力を失わないと考えられるからです。
 さて燃料集合体中の核燃料物質の崩壊熱は燃料集合体が水に浸されている限りは大部分が液体の水を水蒸気に変えるのに使われます。
 1m3の水が蒸発するにはおよそ54万キロカロリーを必要とします。
 私は現状では圧力容器中での燃料集合体の上部の高さは把握していませんが、それが仮に圧力容器の高さの3分の1程度であるとすれば、燃料集合体の上部が露出するのは圧力容器内の水量が110m3程度で減少したときで、元の水量230m3から120m3の水が水蒸気になって排出されてしまったときだと言うことになります。 120m3の水の蒸発には6480万キロカロリーを必要とします。
 上記(1)の崩壊熱に関するデータによれば5時間14分でtotal9120万キロカロリーの崩壊熱発生しているわけですから、1号機の停止後およそ4時間程度で燃料集合体の上部が水面上に露出したのでないかと推定されます。 使用したデータの精度が不確かであり、4時間程度と言うのはひとつの推定値に過ぎないのですが、参考にはなると思います。
by masaaki.nagakura | 2011-03-22 21:44 | 想うこと
想うこと6 福島原子力発電所事故を考える(4)使用済核燃料一時保管プールへの注水方法の提案
以下は3月21日に記したものです。
本日は3月22日ですが巨大なクレーンを持つ特殊車両のクレーンが消防用のホースを背負い、4号機の使用済核燃料プールの真上より真下に向けて放水するのをテレビで観ました。 このような方法があるのであれば下記の手段は必要がないかも知れないと思いましたが、ひとつの発想として役立つ事もあり得ると思い敢えて文章を残しておきます。


3月21日記
福島第一原子力発電所の1から6号機の使用済核燃料一時保管プールのには現在外部からの電力ケーブルが敷設されつつありますが、まだその電力が全ての使用済燃料一時保管プールへの冷却に使用できるかは予断を許さないものがあると思います。
各プールへの注水のためのホースを引く手段も準備しておくべきでないか、と考えます。
消防車による放水は有効であるにしろ、どの程度の水が注入されているかの確証が得られないところに不安があり、また消防車にも消防という本来の任務があり、このような形が長期に続けられる方法ではないと考えられるからです。
人がプールに近接する事は放射線の問題より不可能ですが、1号機、3号機は建屋が壊れているのでヘリコプターにより高所よりホースの出口部をプールの中に差し込むことは可能と思います。 ホースは消防用のホースをつなげて長くするなどの手段で用意し、ホースの先端出口部に錘をつけて、ヘリコプターでその錘部を吊り上げ、高所からプールをめがけて落下させるなどの方法が考えられます。 
1号機、2号機、4号機ではこのような作業の前に建屋の屋根の使用済核燃料一時保管プールの上あたりに孔を空ける工夫が必要です。いずれも非常に困難な作業にはなると思いますがレスキューの専門家などの知恵も集めてそのような方法に関する検討を始めて貰いたいと思います。 (もうそのような検討を始めているかも知れませんがそういう情報が伝わってきていないので敢えて提言するしだいです。)

なお、ホースが敷設した場合にどの程度の水量をプールに送り込む必要があり、またそれは消防用ホースで送れる量なのでしょうか?

各プールに送らなければならない水量はそれぞれのプールにおける核燃料集合体の発熱量から推定できます。次に各プールでの一時間あたりの発熱量とそれが全て水の蒸発に使われたと仮定した場合の蒸発水量を示します。 (水の蒸発熱を540キロカロリー/リットルとして計算します)

 1号機: 6万キロカロリー   ⇒111 リットル/時間=2.7トン/日
 2号機:40万キロカロリー   ⇒740 リットル/時間=18トン/日
 3号機:20万キロカロリー   ⇒370 リットル/時間=9トン/日
 4号機:200万キロカロリー  ⇒3700リットル/時間=89トン/日
 5号機:70万キロカロリー   ⇒1300リットル/時間=31トン/日
 6号機:60万キロカロリー   ⇒1111リットル/時間=27トン/日
 共用プール:100万キロカロリー⇒1850リットル/時間=45トン/日

これは消防用のホースで十分に送れる程度の水量です。 最初はこれ以上を送り込んで水位を上げ、水位が十分に上がった後にこの程度の水量を送り続ければばプールの水温を100℃程度に保持することになります。また、プールの水温を100℃以下に保持するには、水位が上がった後もこれ以上の量を注ぎ続ける必要があるでしょう。 その場合やがてプールに水があふれる結果になります。 現状でも放水されたプールの周辺部は水浸しと考えられ、プールから水があふれても現状以上の問題は起こらないと考えられますが、特に電源の復帰した場合に配線系統の漏電等の問題が生じないか否か、あらかじめ検討が必要でしょう。
プールに水をあふれさせないで、水温を100℃以下(例えば50℃)に保持するには、水を入れ替えていく為の排水管も設ける、あるいはプール内に熱交換器を沈めてその内部に水を通して冷却するような措置が必要となります。このようなことはヘリコプターでは困難と考えられますが、プールに水が満水近く満たされれば、プール周辺の放射線量も低くなり、人の立ち入りは可能になり、そのような工事も可能となるとも考えられます。
いずれにせよ以上は本来の使用済核燃料一時保管プールの冷却系等が復帰できない場合の話です。それが復帰できれば、以上のような(ラジカルな)手段については全く考える必要がなくなります。
ただ、1号機から6号機と共用プールまで7つのプールがあり、その全ての冷却系統が復帰しえるかは確実でない現状においては、やはりこのような手段を検討しておくべきと思います。
by masaaki.nagakura | 2011-03-22 06:18 | 想うこと