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若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(6)熱エネルギー
熱エネルギーと言われるものの正体は何なのでしょうか。
気体、液体、固体のいずれも原子、分子あるいは電子と呼ばれる微粒子の集まりですが、それを構成する個々の微粒子はいずれも運動エネルギーを持ちます。
また微粒子の相互の位置関係から潜在エネルギー(位置エネルギー)を持ちます。
熱エネルギーと言うのはそれらの微粒子のもつ運動エネルギー及び潜在エネルギーの総和です。
温度が非常に高くなければ、熱エネルギーの大部分は微粒子の持つ運動エネルギーと言ってよいでしょう。
微粒子の持つ運動エネルギーと言うのは微粒子が原子〔単原子分子)であれば、その直進運動によるエネルギーです。 複数の原子より出来ている分子(多原子分子)では直進運動のエネルギーの他、回転運動と分子振動のエネルギーを含みます。
分子振動というのは例えて言えば、分子を構成する原子が互いにバネで結ばれていると考えたときに起きる振動のようなものです。最も簡単な2原子分子であれば、2つの原子をつなぐバネが延びたり、縮んだりする振動です。
多原子分子の分子振動というのはやや複雑です。
例えば水の分子の分子振動を見てみます。
水の分子は酸素原子(O)が中心にあって、水素原子(H)が両側に酸素原子と約1Å(1オングストローム=10のマイナス8乗センチメートル)の距離を保ち約105°の角度で酸素原子にくっついています。
(水の話の中では水の分子は電子分布を考慮すると4面体構造になると言う話をしましたが、分子振動を理解するためには電子分布は重要ではないので次の図のモデルで考えます。)
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その距離と角度が1Å及び105°からずれる形で分子振動が起こります。
振動のモードは3種類あります。
一つめは酸素原子の両側の水素原子が同時に酸素原子に近づいたり、離れたりする振動で対称伸縮振動と呼ばれます。
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次は一方の水素原子が酸素原子に近づくと他方が離れ、それが交互に繰り返される反対称伸縮振動です。
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最後に二つの水素原子と酸素原子が作る角度が大きくなったり、小さくなったりする変角振動です。
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3つ以上の原子を持つ分子はより多くの振動モードを持ちます。
一般にn個の原子を持つ分子の振動のモードは3×n-6個となります。
熱エネルギーの話に戻ります。
地球上で見られる普通の温度で熱エネルギーが高いというのは大体においてはこれらの分子の運動エネルギー即ち、直進運動、回転運動及び分子振動のエネルギーの総和が高いということと理解して良いでしょう。
ただし、分子振動のエネルギーと言うのは実際には運動エネルギーと潜在エネルギーを含んでいます。
分子振動しているときの原子の速度と言うのは大きくなったり小さくなったりしていて、速度が大きくなるときは潜在エネルギー(原子同士の間に働く力による潜在エネルギー)が小さくなり、速度が小さくなるときは潜在エネルギーが大きくなります。
そしてその潜在エネルギーと運動エネルギーの総和は一定で、分子振動のエネルギーと言うのはそれらの総和のことです。
時間的に平均すると、分子振動エネルギーのうち運動エネルギーと潜在エネルギーは半分づつです。
分子振動にも激しさの程度があって、分子振動の激しさが低いほうに移るときに赤外線が発生します。殆どの分子群は多かれ少なかれ赤外線を発生します。そして温度が高くなるほど赤外線の強度は強くなり、平均の赤外線波長は短くなります。
分子群の温度が非常に高くなると可視光が発生します。
これは電子のエネルギー順位(電子の潜在エネルギー)というのものがありますが、電子が分子にたたかれて順位があがり、それが元の順位に戻るときに光となって放出されるためです。
by masaaki.nagakura | 2008-09-25 13:34 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(2)分類
エネルギーの分類の仕方はいろいろあるようですが、ここでは大分類として潜在エネルギーと顕在エネルギーという分け方をして見ます。

潜在エネルギーと言うのは実際の動きを伴っていないエネルギーです。
これにに対して実際の動きを伴うエネルギーを顕在エネルギーという言うことにします。
このように分類するのは、このような分類によりエネルギーの2面性を明確に意識するためです。

潜在エネルギーと顕在エネルギーにはそれぞれ次があります。

1.潜在エネルギー
(1)重力の位置エネルギー
(2)電気的な位置エネルギー(化学エネルギーを含む)
(3)磁気的な位置エネルギー
(3)核エネルギー

2.顕在エネルギー
(1)運動エネルギー
(3)電磁波のエネルギー

潜在エネルギーというのは英語でpotential energyと言われるものに相当しますが、日本語では通常位置エネルギーと訳されています。
実際に潜在エネルギーは物と物或いは粒子と粒子の相対的な位置関係によって決まるエネルギーです。
潜在エネルギーの1種である重力の位置エネルギーと言うのは、地球上の物の場合には地球からの距離(高さ)により決まるエネルギーです。
もっと一般的には万有引力の法則による力からもたらされるエネルギーで、天体間の位置関係により決まります。
電気的なエネルギーを言うのは電荷を持った粒子の相対的な位置により決まるエネルギーです。化学エネルギーは分子構造、即ち原子と電子の配列により決まるもので、電気的な位置エネルギーの1種です。
核エネルギーと言うのは原子核の構造即ち原子核の構成要素である、陽子と中性子の数により決まる潜在エネルギーです。
潜在エネルギーと言うのは、物と物あるいは粒子と粒子の位置関係が変化したときに変化して、その変化分が顕在エネルギーとなります。
顕在エネルギーには運動エネルギーと電磁波のエネルギーの2種があります。
運動エネルギーは物或いは粒子の運動(直進運動、回転運動)によるものです。
電磁波のエネルギーは光、電波、X線、ガンマ線などのエネルギーです。

顕在エネルギーと潜在エネルギーの総和は等しく、従って顕在エネルギーが増えれば、潜在エネルギーは減るし、顕在エネルギーが減れば、潜在エネルギーは増えます。
例えば彗星の運動を見ますと、太陽に近づくと潜在エネルギー(重力の位置エネルギー)が減少し、その分スピードが速くなって顕在エネルギー(運動エネルギー)が増えます。

ところで熱エネルギーと言うのは顕在エネルギーでしょうか、潜在えねるぎーでしょうか?
これについては次の項で話します。
by masaaki.nagakura | 2008-09-11 09:00 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(1)種類と性質
これからエネルギーについての話をします。
近代の物質文明は産業革命を基点に発達してきました。
産業革命というのは最初石炭を燃やして蒸気機関を動かすというところから出発しました。
蒸気機関によりそれまで人間の労働にたよっていた仕事を蒸気機関とそれと連動する機械に置き換えることが出来るようになりました。
産業革命は仕事をするためのエネルギーを人力によるものから、石炭など化石燃料によるものに替えたわけです。
それ以来人力以外のエネルギーは私達の生活にとって大変重要な意味をもってきました。

現在ではエネルギー源として石炭の他石油、、原子力、水力、風力、太陽熱、潮力、地熱など様々なものが実用されています。

しかし、エネルギーと言うものが何を意味するかについて聞かれたら何と答えるでしょうか。
「物を動かす力の元」とでも言うでしょうか。
エネルギーは暖房にも必要なことから「熱を発生する元」ともいえるでしょうか。
「物を動かす力の元」というのも「熱を発生する元」と言うのもある意味正しいと思いますが、ここではもう少し突っ込んでエネルギーの具体的な形(種類)と性質を考えてみます。
以下()内の説明はやや詳細を示すもので、読み飛ばしても大意のつかめるように構成します。

エネルギーの最も基本的なものは運動エネルギーです。
(説明:質量M(kg)のものが速度V(m/sec)で運動しているときの運動エネルギーは1/2MV2(1/2×M×V×V)です。このエネルギーの単位はJ(ジュール)です。
例えば体重50kgの人が秒速10mで走るとその運動エネルギーは2500ジュールとなります。
1トン(1000kg)の自動車が秒速20mで走ると20万ジュールです。
J(ジュール)と言う単位は国際単位ですが、直感的に判りにくいのでカロリーと言う単位に直してみます。1カロリーと言うのは1gの水を1℃上昇するのに必要なエネルギーです。
そして1カロリーと言うのは4.18ジュールです。
そうすると体重50kgの人が秒速10mで走っているときの運動エネルギーは約600カロリーになります。1トンの車が秒速20mで走ると約4万8千カロリーです。
因みに成人男子の1日に必要なカロリーは約200万カロリー(2000キロカロリー)です。)


運動エネルギーはそのものに対して「仕事」がなされることによって得られます。「仕事」というのは力×距離です。 この「仕事」を為す潜在的な能力もエネルギーと言います。
この潜在的な能力の代表的なものに重力の位置エネルギーがあります。高いところにあるものは落下する時に力(重力)×距離(落下距離)の「仕事」を得て運動エネルギーを獲得することが出来ます。
(説明:ものに働く重力はその物の質量Mと重力加速度g(9.8m/sec2)の積、即ちM×gです。
その物が距離H(m)だけ落下したときに、その物に重力が為す「仕事」はM×g×Hです。
したがって高さHのところにあるものはM×g×Hの位置エネルギーを持つと言えます。
水力発電と言うのは河川の水の持つ位置のエネルギーを利用したものと言えます。)

運動エネルギーに替えられる他のエネルギーとして熱エネルギーがあります。
蒸気機関やエンジンは熱エネルギーを運動エネルギーに変える機関です。

熱エネルギーは石炭やガソリンを燃焼させて得ることが出来ます。
従って、石炭やガソリンもエネルギーを持つと言うことになりますが、これは化学エネルギーと呼ばれます。
(説明:化学エネルギーと熱エネルギーを説明するための例として蒸気機関というものを考えて見ます。蒸気機関は、石炭を焚いて水を沸騰させ、そのとき発生する蒸気の力でピストンを動かして機関車や船などを動かします。ここで機関車や船の運動エネルギーはピストンの「仕事」から得られています。そしてピストンの「仕事」は水蒸気がピストンに与える「仕事」から得られています。そして水蒸気の「仕事」は石炭の燃焼で発生する熱から得られています。ここではエネルギーは石炭の燃焼熱⇒水蒸気のエネルギー⇒ピストンの仕事⇒機関車や船の運動エネルギー と言うように伝達されています。
水蒸気の持つエネルギーを熱エネルギーと呼びます。
石炭は空気中の酸素と化学反応(燃焼)を起こして熱エネルギーを発生しその熱エネルギーを生み出す力を持つのですが、その石炭の持つエネルギーを化学エネルギーと呼びます。
蒸気機関と言うのは石炭の化学エネルギーを水蒸気の熱エネルギーに換えて、更にそれをピストンを通じて機関車や船の運動エネルギーに変える機関といえます。)


以上で出てきたエネルギーに他のエネルギーも加えると、エネルギーには次のような種類があります。
(1)運動エネルギー
(2)重力の位置エネルギー
(3)熱エネルギー
(4)化学エネルギー
(5)電気エネルギー
(6)磁気エネルギー
(7)核エネルギー
(8)光エネルギー
(9)音のエネルギー

これらのエネルギーは相互に変換できますが、総量を変えることは出来ません。
これはエネルギー保存の法則と言われるものです。
それともうひとつ重要なエネルギーの性質があります。
それはどんなエネルギーもやがて熱エネルギーに移っていき、それを元の運動エネルギーや位置エネルギーに戻すことが難しくなると言うことです。
元に戻すことが出来ないわけではないのですが、一部しかもどせないし、また戻せる分が時間とともに減少していくと言うことです。
これはエントロピー増大の法則と言われるものから帰結される性質です。
by masaaki.nagakura | 2008-09-01 09:00 | 若いあなたに語る自然科学