カテゴリ:オゾンことはじめ( 7 )
オゾンことはじめ10 太古の海中のオゾン
太古には対流圏のオゾンの濃度が生命にとって非常に有害なほど高かったという話をしました。では海中の生命にはその影響はなかったのでしょうか?
対流圏のオゾンは当然海中にも溶け込むでしょう。

まず現在の海で考えてみます。
現在の海ではオゾンは海中に溶かしても、オゾンのままでとどまらず、海水に溶解している臭素イオン(Br-)と化学反応を起こして、臭素酸(HBrO3)や次亜臭素酸(HBrO)などに変わってしまうことが知られています。
現在の海水中の臭素イオンは0.0065%で一見少ないようですが、これはたった水深2cmの臭素イオンが海面上の対流圏の全てのオゾンと等モル反応(臭素イオン数=オゾン分子数 で反応)するほどの濃度です。(補足説明参照)
無論対流圏のオゾンの全てが海水に溶けるはずはないのですが、少なくも海面より海中に溶け込んだオゾンはすべてが、臭素酸(HBrO3)や次亜臭素酸(HBrO)などに変化してします、と考えて良さそうです。

太古の海ではどうだったのでしょうか? 同じように対流圏の空気から海に溶け込んだオゾンは全て臭素酸(HBrO3)や次亜臭素酸(HBrO)などに変化してしたのでしょうか。

ここで問題となるのは太古の海の臭素酸の濃度です。
海には塩素イオンやナトリウムイオンをはじめ各種のイオンが溶け込んでいます(補足説明の表参照)。
それらの組成は地球の歴史の中で変遷してきたと考えられていますが、その変遷の仕方には諸説があるようです。
(1)海水中のイオン濃度は海洋が出来た時から現在まで大きな変化はない。 
(2)海水中のイオン濃度は海洋が出来た時からある組成があり、それが徐々に増大してきた。
(3)海水中のイオン濃度はある時(6億年前?)に突然大きく増大した。

上記で(1)(2)の説によれば、生命誕生の時から海水中へのイオンの溶け込みはあった、という事で、恐らく臭素もあった、と考えられます。(3)の説にしても「ある時大幅に増大した」という事でその前にはイオンがなかったと言っているわけではありません。
生命誕生の時から臭素イオンが海中に存在したことを推定させるものとして臭素が生命の28番目の必須元素だという事です。次はWIKIPEDIAからの引用です。

WIKIPEDIAより
「機能は確認されていないが、アメリカ合衆国ヴァンダービルト大学のビリー・ハドソン博士らは、ミバエへの給餌実験で臭素を除いた餌を食べ続けたグループは死滅したが、通常通り臭素を含む餌を食べた対照グループは生き残ったことから、臭素が動物にとって28番目の必須元素であることを確認し、2014年に発表した」

上述のように現在の海に関して言えば海水中の臭素は溶け込んだオゾンの全てを臭素酸(HBrO3)や次亜臭素酸(HBrO)などに変化させるのに十分な量が存在します。太古の海では臭素イオンの濃度が小さく、海水中でオゾンと臭素酸、次亜臭素酸等が共存した時代があったかも知れません。

ところで海水中のそして臭素酸や次亜臭素酸は魚毒性があります。このことは「魚の養殖用の海水に殺菌の目的でオゾンガスを加えた結果、魚が死ぬことがある」という経験からわかってきたことのようです。現在では海水魚の養殖にオゾン殺菌を利用する場合には海水の殺菌の後に活性炭の層を通過させる場合が多いようです。それは海水中の臭素酸が、活性炭を通過することで臭素イオンに戻って無害になるためです。 
(なお、海老は臭素酸に比較的強いようで、海老の養殖用の海水を養殖池に引き込む前ににオゾンガスをバブリングし、そのまま活性炭も通過させずに養殖池に引き込んでいる例もあります。)

太古の海では対流圏のオゾン濃度が高く、したがって海の表面付近では臭素酸や次亜臭素酸の濃度も高く、魚たちにとっては嫌な場所だったかも知れません。

一方、魚介類が海水表面付近の臭素酸や次亜臭素酸の濃度の変化を季節の変化を知るためのシグナルとして認識していた(そして現在もしている)可能性があります。
これは地上の生命がオゾンの濃度の変化を季節のシグナルとして認識していた(そして現在もしている)可能性があるのと、同様です。

それを推定させる事実の一つは「アコヤガイ(真珠貝)の放卵促進に海水中へのオゾン曝露が有効である」という事です。 アコヤガイを養殖する海水中にオゾンをバブリングすると放卵が促進される、という事です。これは海水中に吹き込まれたオゾンから生成する臭素酸や次亜臭素酸が近々春が到来することをアコヤガイに告げるシグナル=環境ホルモンとして働いているという事です。無論これは仮説ですが、そのような可能性は十分あると思います。

(補足説明:海水の水深2cmまでの臭素イオンが海面上の対流圏全体のオゾンと等モルであることの説明
現在の海水のイオンと化学種の組成はWIKIPEDIAによれば次の表のようです。
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臭素イオンは質量で0.0065%です。これは1m3(約1トン)に65gの臭素イオンがあるという事です。
臭素の原子量は約80gですので65gは0.81モル(65÷80)に相当します。

一方対流圏の空気中のオゾン濃度は現状では0.03ppm程度でこれは1m3の空気中に0.03ccのオゾンという事です。1ccのオゾンは約2mgなので空気1m3中に0.06mgのオゾンがあります。オゾンの分子量は48gなので0.06mgは1.25×10のマイナス6乗モルです。

海中の臭素イオンと空気中のオゾンが等モルで反応すると、1m3の海水は650000m3の空気中のオゾンと反応することになります。ところで対流圏の最高部は11km上空と言われています。 それで海面の1平方メートルの面積の上方にある対流圏の空気の体積は11000m3となります。
650000m3の空気中のオゾンは1m3の海水中の臭素イオンと等モルですから、11000m3の空気中のオゾンは0.017m3(11000m3/650000)の海水中の臭素イオンと等モルです。
即ち水深0.017m≒2cmの深さの海水中の臭素イオンだけで海面上の対流圏のすべてのオゾンと等モルという事になります。)
by masaaki.nagakura | 2015-03-11 21:22 | オゾンことはじめ
オゾンことはじめ9 太古の海中での紫外線
地球の対流圏の酸素が20%近くに上昇するまでは地上のオゾンと紫外線が強くて、生命が陸に上がれなかった、という話をしました。では対流圏の酸素濃度が低かった太古の時代に、海中では生命へのオゾンと紫外線の影響はなかったのでしょうか?
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まず紫外線について考えてみます。普通に考えて、海には海水があるので紫外線がさえぎられるのではないかと思うでしょう。ではどの程度の深さで紫外線がどの程度弱まるかを検討してみます。

次の二つの図は水の光吸収スペクトルを示します。吸収スペクトルは横軸に光の波長を、縦軸に吸収係数をとったものです。この吸収係数が大きいほど光は吸収されやすくて、透過しにくくなります。

はじめの図は水(蒸留水)の吸収スペクトルで2番目には海水と蒸留水の比較示してあります。
2番目の図にみるように海水は蒸留水に比して吸収係数が大きいので透過されにくいという事です。ただしこれは現在の海について言えることです。太古の海はもっと澄んでいて、蒸留水に近かったかも知れません。
そこで太古の海の吸収係数を蒸留水と同じと仮定してみます。
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紫外線は波長が400nm以下の電磁波ですが生命に特に有害なのは350nm程度以下と考えられます。
上の1番目の図を見ると350nmでの吸収係数は0.0038(1/cm)程度です。
そしてそれより波長の短い紫外線の吸収係数はそれよりも大きいのです。したがって吸収係数を0.0038として海中での深さと、紫外線の透過率の関係を計算すると次の図のようになります。
(透過率=EXP(-αL)×100 ここにα(1/cm):透過係数 L(cm):透過距離=水深 )
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この図で見るように海中では10mも潜れば紫外線量は2%(50分の1)程度に減少してしまいます。
ですから海中では40億年も前の海でも10mより深い所では紫外線の害をこうむらないでいられたと考えられます。350nmより短い波長の紫外線は10mより浅い所で殆どなくなってしまいます。
紫外線は弱い(波長の長い)方から順にA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)と分類されていますが、最も有害とされるC波は波長が200nm~280nmの領域の電磁波です。 この領域では吸収係数は上の1番目の図より0.01(1/cm)程度です。吸収係数を0.1(1/cm)として海中での深さと紫外線の透過率を計算すると、下の図のようになります。
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計算結果によると推進4mで2%(50分の1)となります。
太古の海の魚は浅い所に居続けない限り、強力な紫外線の影響をあまり受けないでいられたと考えられます。
by masaaki.nagakura | 2015-03-10 22:45 | オゾンことはじめ
オゾンことはじめ6 対流圏のオゾン(5)役割
 対流圏のオゾンの自然状態での濃度を調べてみたのですが、現在のところネットでは「名古屋大学の松見教授の講義録「第4章 対流圏の大気化学」にあるデータしか見出されていません。
その中に産業革命以降の大気汚染が地球的規模に進行していないと考えられるAC1880年~1900年までの対流圏のオゾンの濃度は10ppb(0.01ppm)程度でしたが現状では50ppb(0.05ppm)程度に達しているというデータがあります。
対流圏のオゾンはオゾン層からくるものもありますが、光化学反応でNO2やVOCから作られるものが多いといわれています。 オゾン層から来るオゾンは産業革命以前と現在でそれほど変わらないでしょう。ですから現在のオゾンが50ppbで産業革命以前のオゾンが10ppbであるとすれば40ppbの増大分は人為的な大気汚染の結果がもたらしたものと推定できます。 
ところでこのように増えた対流圏のオゾンはどのような作用を及ぼしているのでしょうか。
よく言われるのは植物への害です。
自然界の樹木が枯れることがあり、それはオゾンによるという見方があります。
実際温室で、野菜にオゾンを散布すると障害を受けることがあります。
そのようなことから成層圏のオゾンは紫外線を防いで生命を守っているが、対流圏のオゾンは有害無益である、という考え方が流布されています。
私はこのような考え方には大きな疑問を抱いています。
その理由は次の二つです。
1.自然界の樹木が枯れるのはオゾンによるという考え方には科学的証明が不十分である。
 説明:一般にオゾン濃度が高くなる時にはNOXやVOC(揮発性有機物)の濃度も高く、樹木が枯れるのはそのような物質とオゾンが複合した結果とも考えられ、そのような研究が十分にはなされていない。(実はなされていて、私が知らないだけかも知れません)
2.対流圏のオゾンが生命にとって有害無益と言うなら、対流圏のオゾンを無くしたら生命にとってより良い環境がもたらされるのかという追及がなされるべきである。そのような研究が見いだせない。
 説明:例えば対流圏のオゾンはVOCの消滅にも寄与しています。もしオゾンを無くしたら、腐敗臭などのもなかなかなくならないで、地球は臭い衛星になってしまうかも知れません。

私の考えでは「産業革命以後に対流圏のオゾン濃度が高まり、それが生命に害をもたらしている」というのではなく、
「産業革命以後に対流圏のVOCが増大し、それに伴って対流圏のオゾンも増大したが、それがVOCの消滅に寄与し、有害なVOCによる生命への致命的な影響を防いでいる」という事です。オゾンの害がないと言うのではありません。オゾンの害はあってもオゾンの存在がより致命的な状況を防いでいる、という事です。例えば風邪を引くと熱が出ます。熱が出ることは悪いことだ、という捉え方がありますが、体は熱を出すことによって風邪のウイルスと闘っているのです。産業革命以後に対流圏のオゾンが増大したのは、地球の大気汚染が原因ですが、そのオゾンの増大よって大気汚染が緩和されて生命は守られていると思うのです。だから対流圏のオゾンの増大は地球の発熱のようなものだ、と思うのです。

by masaaki.nagakura | 2015-02-05 13:03 | オゾンことはじめ
オゾンことはじめ5 対流圏のオゾン(4)自然状態
対流圏という大自然の舞台では主役が水素、炭素、窒素、水素とその化合物ですがそれ以外にありとあらゆる微量元素や地層起源や植物起源の微粒子が登場します。また対流圏というのは大洋と大地と生命全体と接していて、それらとの間で絶え間なくやり取りが、なされています。
対流圏のオゾンもそのような全てと関わりながら存在しています。

そこでまず重要なことは本来の自然状態(人間の活動が自然界に大きな影響を及ぼす以前)ではどのようであるかを把握することだと思います。その自然状態をバックグラウンドとして把握し、それが現状ではどの辺がどの程度変動していて、それが人類を含む生命にどのような影響を与えているかを考える、という順序で観ていきたいと思うのです。
ここで問題となるのは本来の自然状態は一体何時の時点のものか、という事です。
人間はいわゆる原始時代から自然界に影響を与えてきています。特に火の使用と道具の発明が他の生命にない大きさの影響を自然界に与えたでありましょう。
ついで農耕と牧畜の発達が更に大きな影響を与えて来ました。
しかし、対流圏に対しての圧倒的に大きな影響は産業革命以後の農業、工業の発展およひ人間の生活様式の変化によるものと考えられます。
ですから、以下の話の中でバックグラウンドとして想定する自然状態としては「産業革命以後において、人間の活動が対流圏の状態に顕著な影響を及ぼす以前の状態」として捉えておきます。


by masaaki.nagakura | 2014-11-19 13:02 | オゾンことはじめ
オゾンことはじめ4 対流圏のオゾン(4)キャラクター達
前節で述べましたが、対流圏のオゾンは成層圏で生まれて対流圏に移住してきたものと対流圏の中で生まれる土着のものが合わさっています。(この辺から話を面白く展開するために分子などをいくぶん擬人化して、話します。)
成層圏で生まれたオゾンは酸素分子O2が太陽の光を受けて2つの酸素原子Oになり、その酸素原子Oが酸素分子O2と結ばれてオゾンO3になったものです。
それから、対流圏で生まれるものはNO2とVOCが太陽の光を受けて光化学反応を起こして生まれています。


ここで出てきたのはNO2とかVOCとかいうのは一体何者なのでしょうか?
そして対流圏のオゾンは他にどのような者達と関わっているのでしょうか?
これから始める物語は、オゾンと対流圏の中に息づく者達の間に繰り広げられるドラマです。
キャラクターの紹介は彼等を作っている元となる原子から。
次は対流圏で最もよく登場する役者達。
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まずこの中の水素君と酸素君の構造を見てみましょう。
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ここで赤丸は陽子(プロトン)、白丸は中性子(ニュートロン)そして青丸は電子です。
水素は一個の陽子と一個の電子だけから出来ています。
一方酸素はというと8個の陽子と8個の中性子が核にあって周りを8つの電子が取り囲んでいます。
次に炭素君と窒素君です。
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炭素と窒素は見たところ酸素によく似た構造です。
実際陽子と中性子と電子の数が少し違うだけなのです。
炭素は陽子6個、中性子6個、電子6個です。
窒素は陽子7個、中性子7個、電子が7個です。
このように酸素君、炭素君、窒素君は似た構造のようですが、化学的性質(以下性格)は全くと言ってよいほど違っています。これから彼らの性格について話をします。

最初に登場してもらうのは酸素君。
酸素君は陽子と中性子と電子がそれぞれ8個ずつあると原子達の中で8番目に重い。

宇宙の中で圧倒的に沢山あるのは一番軽い水素君です。2番目に多いのが2番目に重いヘリウム君。ところが3番目に多いのがなんと酸素君
です。そして地球の地殻では一番多いのが酸素君です。
きわめて反応性が高く、ほとんどどんなものともカップルを組んでしまう。
カップルを組まないのは、貴金属や希ガス(ヘリウムやアルゴン)だけ。水素と結ばれて水分子となり、またケイ素と結び付いて地殻の主成分(重量比70%以上)である二酸化ケイ素となっています。
炭素と結び付いて二酸化炭素になります。
次は対流圏で活躍する主な酸素化合物です。
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この中で二酸化炭素は、地球の創世記の大気の主成分と言われているものです。
酸素はその反応性の高さから創世記の地球では単独で存在することは出来ないで大気中では二酸化炭素の中に存在していたわけです。
その二酸化炭素から植物が酸素を解き放って現在の大気の中の酸素分子があり、更にオゾンもあるいうわけです。
ですから二酸化炭素は現在の大気中の酸素の生みの親のようなものです。
窒素酸化物は植物の栄養源の補給をするもので本来大自然の循環の中では重要な働きを持っている化合物だと思います。近年化学肥料や燃焼ガスからの放出で過剰になり、問題視される物質とされていますが、その本来の働きはもっと究明したいものです。

人類の文明の基礎には火の利用があるとされています。
火は酸素と有機化合物あるいは炭素との化学反応で起こります。火をコントロールできるのは生命体の中で(多分)人類だけで、人類を万物の霊長と自称させている大元に火があり、火は酸素君があるからできるので、こうなると人類は酸素君におおいに感謝です。

 次に登場していただくのは窒素君です。

 この窒素君のキャラクターがまた酸素君と対照的。
 とにかく人見知りが激しいというのか、めったなことではカップルを組まない。地味ーな性格です。特に地球に大量にある鉄とかケイ素とかとはカップルを組みにくいために地殻には極めて少なく、わずか0.0005%と言います。そのためか地中からは追い出せれてほとんどが大気圏にあって、大気の80%近くも占めています。それもほとんどが単体の窒素分子(N2)です。 上述のように窒素酸化物などもありますが全体からみればわずかです。
 でも生命との関わりは深く、動物が尿とともに排出するアンモニアは窒素と水素の結合態でそれが微生物の働きで土中で硝酸イオンになって、植物に吸収されます。
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 植物の中ではタンパク質を構成するアミノ酸の必須要素ともなります。タンパク質は動物にとっては筋肉や毛髪のみならず、酵素や免疫のための抗体の材料にもなります。 そのようなことを思うと窒素君は生命と極めて関わりが深く、生命の守り神のように見えてきます。窒素君に感謝です。

次は水素君と炭素君、この二人が組むと世界はガラッと異なった様相を呈してきます。
水素君が酸素君と結びつくと水、炭素君が酸素君と結びつくと二酸化炭素です。水も二酸化炭素も無機化合物の仲間です。ところが炭素君と水素君が結びつくとまるでパンドラの箱を開けたように色々な化合物が出てきます。それらの化合物は有機化合物と呼ばれます。
次はもっとも単純な有機化合物です。
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この図から想像がつくように炭素が1個増えると水素が2個ふえる化合物が際限なく出来ます。化学記号としてはCnH2n+2です。
ここでnというのは炭素君の数ですか、これが増えるほど分子が重くなっていきます。上に登場してもらった分子達は常温、常圧で気体ですが、nが増えていくと液体になります。これは私達が油と呼んでいるものです。更にnが増えていくと固体になります。私達が蝋と呼んでいるものはその類いです。
有機化合物は炭素と水素が一列につながったものばかりでなく、ベンゼン環と呼ばれる輪になったものもあります。
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それから炭素と水素にさらに酸素が加わるとアルコールやグルコース(ブドウ糖)と言ったものも出来てきます。
 これはよくある2種のアルコールです。メタンの水素(H)が一か所OHに置き換わったがメタノールで人間には猛毒ですが、燃料電池やバイオエネルギー源としても登場してきています。
 エタンの水素(H)が一か所OHに置き換わったのがエタノールで人間には摂取の仕方次第で毒にも薬にもなることはご存じですね。
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更に窒素が加わってアミノ酸など生命の源となるものも出来て来るのです。炭素君、水素君にも感謝です。
次は最も簡単なアミノ酸のグリシン。
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特に有機化合物の中で揮発性のものをVOC(Volatile organic compound:揮発性有機化合物)と呼んでいます。
常温、常圧で気体のものばかりでなく、液体でも固体でも大気中に揮発する成分はVOCと呼んでいいと思います。花や樹木からの香り、昆虫の発散するフェロモンなどもVOCの一種です。
この対流圏には生命体から途方もない種類のVOCが発散され、対流圏で繰り広げられるドラマに加わっているのです。
なお近年人間の活動により発せられるVOCが増えてきて問題になっています。特に自動車からの排気によるVOCは窒素酸化物とともに問題になっています。オゾンがこのような物質達とどのように関わっているのか、これから、その実態にも迫ってみたいです。

以上で対流圏に登場するキャラクターの紹介を終えます。













by masaaki.nagakura | 2014-11-13 06:52 | オゾンことはじめ
オゾンことはじめ3 対流圏のオゾン(2)その源
 実は私は対流圏のオゾンは殆どが成層圏からもたらされると考えておりました。
気体中では拡散現象というのがあります。これは気体中である物質が濃度が高い所と低いところがある場合にはその物質は濃度の高い所から、低い所に移動していくという現象です。成層圏のオゾン層では下の写真にもあるようにオゾン濃度が高度20~30Km程度で最大で、その下は対流圏(高度12km位まで)に近いほど低くなるので、成層圏のオゾンは拡散によって対流圏に移動していくはずです。

所が計算の結果では拡散によって成層圏から対流圏に移動するオゾンの量は対流圏のオゾン量から比べるとわずかで、とっても対流圏のオゾンを満たすほどにはなりません。

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[写真説明:気象庁のデータで今年9月のつくば上空でのオゾン濃度の高度分布で高度25km位のところにピークを持つ山がオゾン層です.]
 
次に考えたのは対流圏の上方と成層圏の下方との間で対流が起こっているとすれば、かなりの量が成層圏から対流圏に流れ込むはずと、いう事です

 例えばジェット旅客機は対流圏と成層圏の境目あたりを飛びますが、乱気流に出くわすこともあります。ですから、このような場所でオゾンが成層圏から対流圏に受け渡されていてもおかしくはないだろうと思います。 

 そんなことを考えていたら、国立環境研究所が新潟県で成層圏から地上に至るオゾンの割合を実測した論文をネットで見つけました。それによれば地表に到達するオゾンの20-25%が成層圏からという事です。
やはりオゾンは成層圏から来てるんだ、と得心しました。

それにしてもこのことは、75-80%のオゾンが対流圏で生まれて地表に届いている、ということも意味しているのです。

 誰がそのような説を唱えだしたかは、調べてはないのですが、対流圏のオゾンは主にNOXとVOCの関係した光化学反応から生まれている、とされています。
「対流圏のオゾンはNO2が太陽の光を受けて酸素原子を放出し、その酸素原子が酸素分子と結合してオゾンとなる。またVOCの共存下でNO2が再生されその反応が促進される」という考え方です。
 現在はこれが対流圏のオゾンの主要な発生原因とされているようです。
 ではこの考え方で対流圏のオゾンの存在量を数値的に説明できるのでしょうか?
(以下の文 12月27日修正しました) 
 先ず対流圏のオゾンはどの程度あるのでしょうか?
仮に地球のオゾンで上空にあるものをすべて地上に下ろしたとすると、厚みが2~3mm程度と言われます。
地球の表面積は約5億平方kmですので2mmの厚みでもオゾンの体積は1兆立法メートルになります。オゾンの質量は1m3で約2kgですので1兆立方メートルのオゾンは2兆kg即ち20億トンとなりますとなります。上に掲げたオゾン分圧の鉛直方向分布(at つくば)から推定すると対流圏のオゾンはこの20分の1の1億トン程度はありそうです。そしてこの1億トンのかなりの部分が毎日消えています。実際地上付近で観測されるオゾンの濃度は夜間には非常に低くなっています。
ただし新潟県保健科学研究所の研究論文「新潟県内のオゾン分布と挙動を調べてみたら」によると八海山頂上(標高1778m)などの高所では1日のオゾン濃度は昼夜であまり変わらない、ということです。そうなると消滅するのは地上付近のオゾンであって、上空ではあまり消えていないようです。

それで消滅量を少なく見積ると1億トンの5%の500万トン程度が1日で消えています。
(注:室内のオゾンの半減期:=濃度が2分の1に減る時間は特別な工夫をしない限り高々数時間、環境により30分以下にもなります。地表近くオゾンの半減期もその程度と考えられます。一方上空のオゾンは反応する対象物質がないかぎり1日以上の半減期を持つ可能性があります)

 一方地球上で大地から微生物などの働きで自然界から放たれるNO2を含むNOX量は年間で10億トン程度(5億トン程度という推定もあり)で、また人類の活動によるNOXの排出量はその10分の1に満たない、という推定があります。1日の発生量で言えば自然界と人類の活動を合わせて300万トン程度です。
こう.考えるとオーダー的にはNOXの発生量は一致します。
なおNO2(二酸化窒素)からO3(オゾン)が生成する反応は次のようである、とされています。

NO2→NO+O
O+O2→O3

一方オゾンはNOをNO2に変えて自らはO2になるという次の反応を容易に起こします。
NO+O3→NO2+O2

これですとオゾンは生成される傍から消えていくので増えることが出来ないことになります。
一方NOはVOCが存在するとそれとも光化学反応を起こしてNO2になるとも言われています。
そうするとオゾンが生成できることになります。

正確なことは判りませんが、どうも対流圏でのオゾンの生成はそのような微妙なバランスの中で起こっているようです。

by masaaki.nagakura | 2014-11-11 12:54 | オゾンことはじめ
オゾンことはじめ2.対流圏のオゾン(1)はじめに
私は「対流圏のオゾンは大気の浄化、殺菌、生命の活性化など地球上の生命にとって不可欠の働きをなしている」と、考えております。
一方、対流圏のオゾンの有害性が学問的な観点も交えながら論議され、またマスコミでそのような報道がなされる、という現状があります。
実際には現在発生している対流圏のオゾンの害はほとんどが近代における人間の生活および産業活動の結果、もたらされた大気環境汚染によるものです。
本来の対流圏のオゾンは現在でも生命に不可欠な有益な働きをなしていることに変わりはないのです。
「対流圏のオゾンは悪いオゾン」という見方があるようですが、それはこの大自然の霊妙な働きを見透せて、いないのではないか、と思うのです

と言っても以上は私の直感のようなもので、そう言い張るだけの理論的根拠があるわけではないのです。

それでこの際、この対流圏のオゾンの実態について、掘り下げて考えてみよう、と思います。
まず対流圏のオゾンがどのようなもので、どこから生まれてくるのかについて話をします。


実は私は対流圏のオゾンは殆どが成層圏からもたらされると考えておりました。
気体中では拡散現象というのがあります。これは気体中である物質が濃度が高い所と低いところがある場合にはその物質は濃度の高い所から、低い所に移動していくという現象です。成層圏のオゾン層ではオゾン濃度が高度20~25Km程度で最大で、その下は対流圏(高度12km位まで)に近いほど低くなるので、成層圏のオゾンは拡散によって対流圏に移動していくはずです。

所が計算の結果では拡散によって成層圏から対流圏に移動するオゾンの量は対流圏のオゾン量から比べるとわずかで、とっても対流圏のオゾンを満たすほどにはなりません。
次に対流圏の上方と成層圏の下方との間で対流が起こっているとすれば、かなりの量が成層圏から対流圏に流れ込むはずと、考えました。
例えばジェット旅客機は対流圏と成層圏の境目あたりを飛びますが、乱気流に出くわすこともあります。ですから、このような場所でオゾンが成層圏から対流圏に受け渡されていてもおかしくはないだろうと思います。
国立環境研究所が新潟県で成層圏から地上に至るオゾンの割合を実測した論文をネットで見つけました。それによれば20-15%が成層圏からという事です。
では残りはどこからかというと一般にNOXとVOCの関係した光化学反応とされています。
「対流圏のオゾンはNO2が太陽の光を受けて酸素原子を放出し、その酸素原子が酸素分子と結合してオゾンとなる。またVOCの共存下でNO2が再生されその反応が促進される」という考え方です。


現在はこれが対流圏のオゾンの主要な発生原因とされているようです。

ではこの考え方で対流圏のオゾンの存在量を数値的に説明できるのでしょうか?
先ず対流圏のオゾンはどの程度あるのでしょうか?
仮に地球のオゾンで上空にあるものをすべて地上に下ろしたとすると、厚みが2~3mm程度と言われます。
地球の表面積は約5兆平方kmですので2mmの厚みでもオゾンの体積は1000万立法キロメートルになります。対流圏のオゾンはこの10ぶんの1の100万立法キロメートル以上でしょう。
オゾンの質量は1立法キロメートルが2千トン程度ですので100万立法キロメートルは20億トンとなります。
そしてこの20億トンのかなりの部分が毎日消えています。実際地上で観測されるオゾンの濃度は夜間には非常に低くなっています。
少なく見積もっても20億トンの10分の1の2億トンは1日で消えてしまいます。
(注:室内のオゾンの半減期:=濃度が2分の1に減る時間は特別な工夫をしない限り高々数時間、環境により30分以下にもなります。地表近くオゾンの半減期もその程度と考えられます。一方上空のオゾンは反応する対象物質がないかぎり1日以上の半減期を持つ可能性があります)
一方地球上で大地から微生物などの働きで自然界から放たれるNO2を含むNOX量は年間で10億トン程度(5億トン程度という推定もあり)で、また人類の活動によるNOXの排出量はその10分の1に満たない、という推定があります。1日の発生量で言えば自然界と人類の活動を合わせて300万トン程度です。
これは毎日消えるオゾン量、2億トンの1.5%に過ぎません。

NO2(二酸化窒素)からO3(オゾン)が生成する反応は次のようである、とされています。

NO2→NO+O
O+O2→O3

でもこれだけですと、NO2の1分子にオゾン1分子しか出来ないので現実のNO2発生量からは、対流圏オゾンを維持し得ないでしょう。

以上はNO2のみから可能なオゾンの発生量ですが、この反応にVOC(揮発性有機化合物)が加わると、NOが再びNO2に戻り、また上記の反応がおこる、と言われます。
確かにそれならば1つのNO2が多数のO3を作り出せるので、NO2が対流圏のオゾンを作っている、と言うのも有り得ます。(つづく)

by masaaki.nagakura | 2014-11-09 16:45 | オゾンことはじめ