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若い貴方に語る自然科学5 エネルギーの話(9)赤外線のエネルギー
あらゆる物質は電磁波の1種である赤外線を放射しています。
これは分子振動や結晶格子の振動から発生するものです。
次は水の分子の対象伸縮振動をアニメにしたものです。(未完)
この様な分子振動の振幅が小さくなる際に赤外線が放出されます。
(続く)
アニメをうまく載せられないので本稿は後回しにします。
悪しからず。
by masaaki.nagakura | 2008-10-25 16:54 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(8)電磁波のエネルギー
電磁波と言うと何を思うでしょうか? ラジオやテレビの信号を送る電波のようなものを思い浮かべるかも知れません。 確かにそれも電磁波です。
電磁波の定義と言うのは
「空間の電場と磁場の変化によって形成された波(波動)のこと」(Wikipedia)
です。
この定義による電磁波と言うのは極めて広い範囲を含みます。周波数(1秒間に振動する回数)の高い方からいくと、ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、電波等を含みます。
電磁波というのは波動の1種ではあるのですが、一方で粒子としての性質を持っています。
周波数の低いマイクロ波や電波は波動の性質が強く、現状では粒子として検出することは困難ですが、ガンマ線は放射能検出器を用いて、X線から赤外線までは光電子増倍管と言う検出器を用いて粒子として検出できます。最近は遠赤外線も半導体素子を用いて粒子として観測する技術が発明されているようです。(参照
電磁波を粒子として観るときにはそれを光子と呼びます。
光子は質量はないのですがエネルギーを持っています。
一粒の光子の持つエネルギーはアインシュタインによる式
E=hν
であらわせます。
ここで、hはプランク定数と言われる物理定数、v(ニュー)は電磁波の周波数です。

原子、分子等のエネルギー状態が高い方から低い方に変化するときにそのエネルギー差のエネルギーを持つ光子が発生します。
ガンマ線の発生は主に原子核からで、核エネルギーが高い状態から低い状態に変化する際に放出されます。
X線、紫外線、可視光は主に原子の中の電子のエネルギー準位が高いところから低いところに移る際に放出されます。 人工的には高速の電子を急激に止める或いは曲げることにより発生させます。
赤外線及び遠赤外線は主に分子振動のエネルギーレベルが高い方から低い方に移るときに放出されます。

上のアインシュタインの式から判るように、光子のエネルギーは周波数に比例しています。
電磁波のエネルギーが高いということは周波数が高いということです。
電磁波の速度は真空中では一定(光速)ですので周波数が高いということは波長が短いということです。
ですから上記の順序ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、電波 というのは周波数の高い順ですが同時に波長の短い順、光子のエネルギーの高い順と言えます。
エネルギーの高い光子ほど物質に対する貫通力があり、生物のDNAを破壊する場合があります。 ガンマ線、X線、紫外線等が害があるのはこのためです。
by masaaki.nagakura | 2008-10-15 08:59 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(7)内部エネルギー
物理学の一分野である熱力学では内部エネルギーと言う言葉が使われます。内部エネルギーは核エネルギー、化学エネルギー、熱エネルギー等の総和と考えてよいと思います。
即ち

内部エネルギー=核エネルギー+化学エネルギー+熱エネルギー


です。
核エネルギーは核的な反応(核分裂、核融合、放射等)が起こる時に変化するものです。
化学エネルギーは化学的な反応が起こる時に変化します。
そして熱エネルギーは温度、圧力という環境条件が変化するときに変化します。
(熱エネルギーを内部エネルギーと同一とみなす考え方もあるようです。即ち、上記で言う熱エネルギーに化学エネルギー及び核エネルギーを加えたものを熱エネルギーと考えるか考え方です。しかし「熱」と言う意味は本来温度と関係したものと捉えられているので、熱エネルギーを温度に関係して変化するエネルギーという限定した意味で捉えた方がすっきりすると思います。)







(つづく)
by masaaki.nagakura | 2008-10-14 13:02 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(6)熱エネルギー
熱エネルギーと言われるものの正体は何なのでしょうか。
気体、液体、固体のいずれも原子、分子あるいは電子と呼ばれる微粒子の集まりですが、それを構成する個々の微粒子はいずれも運動エネルギーを持ちます。
また微粒子の相互の位置関係から潜在エネルギー(位置エネルギー)を持ちます。
熱エネルギーと言うのはそれらの微粒子のもつ運動エネルギー及び潜在エネルギーの総和です。
温度が非常に高くなければ、熱エネルギーの大部分は微粒子の持つ運動エネルギーと言ってよいでしょう。
微粒子の持つ運動エネルギーと言うのは微粒子が原子〔単原子分子)であれば、その直進運動によるエネルギーです。 複数の原子より出来ている分子(多原子分子)では直進運動のエネルギーの他、回転運動と分子振動のエネルギーを含みます。
分子振動というのは例えて言えば、分子を構成する原子が互いにバネで結ばれていると考えたときに起きる振動のようなものです。最も簡単な2原子分子であれば、2つの原子をつなぐバネが延びたり、縮んだりする振動です。
多原子分子の分子振動というのはやや複雑です。
例えば水の分子の分子振動を見てみます。
水の分子は酸素原子(O)が中心にあって、水素原子(H)が両側に酸素原子と約1Å(1オングストローム=10のマイナス8乗センチメートル)の距離を保ち約105°の角度で酸素原子にくっついています。
(水の話の中では水の分子は電子分布を考慮すると4面体構造になると言う話をしましたが、分子振動を理解するためには電子分布は重要ではないので次の図のモデルで考えます。)
d0026078_12353162.jpg

その距離と角度が1Å及び105°からずれる形で分子振動が起こります。
振動のモードは3種類あります。
一つめは酸素原子の両側の水素原子が同時に酸素原子に近づいたり、離れたりする振動で対称伸縮振動と呼ばれます。
d0026078_8391319.jpg

次は一方の水素原子が酸素原子に近づくと他方が離れ、それが交互に繰り返される反対称伸縮振動です。
d0026078_12403724.jpg

最後に二つの水素原子と酸素原子が作る角度が大きくなったり、小さくなったりする変角振動です。
d0026078_12421076.jpg

3つ以上の原子を持つ分子はより多くの振動モードを持ちます。
一般にn個の原子を持つ分子の振動のモードは3×n-6個となります。
熱エネルギーの話に戻ります。
地球上で見られる普通の温度で熱エネルギーが高いというのは大体においてはこれらの分子の運動エネルギー即ち、直進運動、回転運動及び分子振動のエネルギーの総和が高いということと理解して良いでしょう。
ただし、分子振動のエネルギーと言うのは実際には運動エネルギーと潜在エネルギーを含んでいます。
分子振動しているときの原子の速度と言うのは大きくなったり小さくなったりしていて、速度が大きくなるときは潜在エネルギー(原子同士の間に働く力による潜在エネルギー)が小さくなり、速度が小さくなるときは潜在エネルギーが大きくなります。
そしてその潜在エネルギーと運動エネルギーの総和は一定で、分子振動のエネルギーと言うのはそれらの総和のことです。
時間的に平均すると、分子振動エネルギーのうち運動エネルギーと潜在エネルギーは半分づつです。
分子振動にも激しさの程度があって、分子振動の激しさが低いほうに移るときに赤外線が発生します。殆どの分子群は多かれ少なかれ赤外線を発生します。そして温度が高くなるほど赤外線の強度は強くなり、平均の赤外線波長は短くなります。
分子群の温度が非常に高くなると可視光が発生します。
これは電子のエネルギー順位(電子の潜在エネルギー)というのものがありますが、電子が分子にたたかれて順位があがり、それが元の順位に戻るときに光となって放出されるためです。
by masaaki.nagakura | 2008-09-25 13:34 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(2)分類
エネルギーの分類の仕方はいろいろあるようですが、ここでは大分類として潜在エネルギーと顕在エネルギーという分け方をして見ます。

潜在エネルギーと言うのは実際の動きを伴っていないエネルギーです。
これにに対して実際の動きを伴うエネルギーを顕在エネルギーという言うことにします。
このように分類するのは、このような分類によりエネルギーの2面性を明確に意識するためです。

潜在エネルギーと顕在エネルギーにはそれぞれ次があります。

1.潜在エネルギー
(1)重力の位置エネルギー
(2)電気的な位置エネルギー(化学エネルギーを含む)
(3)磁気的な位置エネルギー
(3)核エネルギー

2.顕在エネルギー
(1)運動エネルギー
(3)電磁波のエネルギー

潜在エネルギーというのは英語でpotential energyと言われるものに相当しますが、日本語では通常位置エネルギーと訳されています。
実際に潜在エネルギーは物と物或いは粒子と粒子の相対的な位置関係によって決まるエネルギーです。
潜在エネルギーの1種である重力の位置エネルギーと言うのは、地球上の物の場合には地球からの距離(高さ)により決まるエネルギーです。
もっと一般的には万有引力の法則による力からもたらされるエネルギーで、天体間の位置関係により決まります。
電気的なエネルギーを言うのは電荷を持った粒子の相対的な位置により決まるエネルギーです。化学エネルギーは分子構造、即ち原子と電子の配列により決まるもので、電気的な位置エネルギーの1種です。
核エネルギーと言うのは原子核の構造即ち原子核の構成要素である、陽子と中性子の数により決まる潜在エネルギーです。
潜在エネルギーと言うのは、物と物あるいは粒子と粒子の位置関係が変化したときに変化して、その変化分が顕在エネルギーとなります。
顕在エネルギーには運動エネルギーと電磁波のエネルギーの2種があります。
運動エネルギーは物或いは粒子の運動(直進運動、回転運動)によるものです。
電磁波のエネルギーは光、電波、X線、ガンマ線などのエネルギーです。

顕在エネルギーと潜在エネルギーの総和は等しく、従って顕在エネルギーが増えれば、潜在エネルギーは減るし、顕在エネルギーが減れば、潜在エネルギーは増えます。
例えば彗星の運動を見ますと、太陽に近づくと潜在エネルギー(重力の位置エネルギー)が減少し、その分スピードが速くなって顕在エネルギー(運動エネルギー)が増えます。

ところで熱エネルギーと言うのは顕在エネルギーでしょうか、潜在えねるぎーでしょうか?
これについては次の項で話します。
by masaaki.nagakura | 2008-09-11 09:00 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学5 エネルギーの話(1)種類と性質
これからエネルギーについての話をします。
近代の物質文明は産業革命を基点に発達してきました。
産業革命というのは最初石炭を燃やして蒸気機関を動かすというところから出発しました。
蒸気機関によりそれまで人間の労働にたよっていた仕事を蒸気機関とそれと連動する機械に置き換えることが出来るようになりました。
産業革命は仕事をするためのエネルギーを人力によるものから、石炭など化石燃料によるものに替えたわけです。
それ以来人力以外のエネルギーは私達の生活にとって大変重要な意味をもってきました。

現在ではエネルギー源として石炭の他石油、、原子力、水力、風力、太陽熱、潮力、地熱など様々なものが実用されています。

しかし、エネルギーと言うものが何を意味するかについて聞かれたら何と答えるでしょうか。
「物を動かす力の元」とでも言うでしょうか。
エネルギーは暖房にも必要なことから「熱を発生する元」ともいえるでしょうか。
「物を動かす力の元」というのも「熱を発生する元」と言うのもある意味正しいと思いますが、ここではもう少し突っ込んでエネルギーの具体的な形(種類)と性質を考えてみます。
以下()内の説明はやや詳細を示すもので、読み飛ばしても大意のつかめるように構成します。

エネルギーの最も基本的なものは運動エネルギーです。
(説明:質量M(kg)のものが速度V(m/sec)で運動しているときの運動エネルギーは1/2MV2(1/2×M×V×V)です。このエネルギーの単位はJ(ジュール)です。
例えば体重50kgの人が秒速10mで走るとその運動エネルギーは2500ジュールとなります。
1トン(1000kg)の自動車が秒速20mで走ると20万ジュールです。
J(ジュール)と言う単位は国際単位ですが、直感的に判りにくいのでカロリーと言う単位に直してみます。1カロリーと言うのは1gの水を1℃上昇するのに必要なエネルギーです。
そして1カロリーと言うのは4.18ジュールです。
そうすると体重50kgの人が秒速10mで走っているときの運動エネルギーは約600カロリーになります。1トンの車が秒速20mで走ると約4万8千カロリーです。
因みに成人男子の1日に必要なカロリーは約200万カロリー(2000キロカロリー)です。)


運動エネルギーはそのものに対して「仕事」がなされることによって得られます。「仕事」というのは力×距離です。 この「仕事」を為す潜在的な能力もエネルギーと言います。
この潜在的な能力の代表的なものに重力の位置エネルギーがあります。高いところにあるものは落下する時に力(重力)×距離(落下距離)の「仕事」を得て運動エネルギーを獲得することが出来ます。
(説明:ものに働く重力はその物の質量Mと重力加速度g(9.8m/sec2)の積、即ちM×gです。
その物が距離H(m)だけ落下したときに、その物に重力が為す「仕事」はM×g×Hです。
したがって高さHのところにあるものはM×g×Hの位置エネルギーを持つと言えます。
水力発電と言うのは河川の水の持つ位置のエネルギーを利用したものと言えます。)

運動エネルギーに替えられる他のエネルギーとして熱エネルギーがあります。
蒸気機関やエンジンは熱エネルギーを運動エネルギーに変える機関です。

熱エネルギーは石炭やガソリンを燃焼させて得ることが出来ます。
従って、石炭やガソリンもエネルギーを持つと言うことになりますが、これは化学エネルギーと呼ばれます。
(説明:化学エネルギーと熱エネルギーを説明するための例として蒸気機関というものを考えて見ます。蒸気機関は、石炭を焚いて水を沸騰させ、そのとき発生する蒸気の力でピストンを動かして機関車や船などを動かします。ここで機関車や船の運動エネルギーはピストンの「仕事」から得られています。そしてピストンの「仕事」は水蒸気がピストンに与える「仕事」から得られています。そして水蒸気の「仕事」は石炭の燃焼で発生する熱から得られています。ここではエネルギーは石炭の燃焼熱⇒水蒸気のエネルギー⇒ピストンの仕事⇒機関車や船の運動エネルギー と言うように伝達されています。
水蒸気の持つエネルギーを熱エネルギーと呼びます。
石炭は空気中の酸素と化学反応(燃焼)を起こして熱エネルギーを発生しその熱エネルギーを生み出す力を持つのですが、その石炭の持つエネルギーを化学エネルギーと呼びます。
蒸気機関と言うのは石炭の化学エネルギーを水蒸気の熱エネルギーに換えて、更にそれをピストンを通じて機関車や船の運動エネルギーに変える機関といえます。)


以上で出てきたエネルギーに他のエネルギーも加えると、エネルギーには次のような種類があります。
(1)運動エネルギー
(2)重力の位置エネルギー
(3)熱エネルギー
(4)化学エネルギー
(5)電気エネルギー
(6)磁気エネルギー
(7)核エネルギー
(8)光エネルギー
(9)音のエネルギー

これらのエネルギーは相互に変換できますが、総量を変えることは出来ません。
これはエネルギー保存の法則と言われるものです。
それともうひとつ重要なエネルギーの性質があります。
それはどんなエネルギーもやがて熱エネルギーに移っていき、それを元の運動エネルギーや位置エネルギーに戻すことが難しくなると言うことです。
元に戻すことが出来ないわけではないのですが、一部しかもどせないし、また戻せる分が時間とともに減少していくと言うことです。
これはエントロピー増大の法則と言われるものから帰結される性質です。
by masaaki.nagakura | 2008-09-01 09:00 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学4 水の話(21)まとめ
科学が発達したといわれる今日でも水は神秘な存在です。
水の流転、分子構造、超臨界水、美味しい水などについて話をしてきましたが、それらのテーマのどれをとってもまだまだ判らないことだらけと言うのが実態と思います。
しかし、この判らないことだらけだということが判る、と言うことが自然科学を学ぶ上で極めて重要なことだと思います。
判らないから、神秘的で、神秘的だからその秘密を探ろうとする、ということであなたの自然に対する深い認識が生まれてくると思います。
ニュートンは晩年に次のように言ったということです。
「私が、世間からどのような目で見られているか分からないが、私は、海岸で美しい貝やなめらかな小石を捜し求めてあちこちさまよっている少年と同じであり、私の目の前には、未知の真理をたたえた大洋が横たわっているのである。」
自然法則というものの存在をはじめて明らかにした人の言葉として、何と謙虚な言葉でしょうか。
ニュートンの心の中には常に自然を神秘なものとして感じている感覚が深く、強くあったと思うのです。
一時期「近代の科学技術は自然を征服しつつある」と言われた時代があったと思います。
これは全くの人間の思い上がりという他はないでしょう。
このような感覚は産業革命とその後に続いた技術革新が我々の生活に物質面で驚くような変化(進歩?)を齎したことに幻惑されて生じてきたもので何の根拠もない感覚です。
このような感覚の延長線上には自然の汚染、エネルギーの枯渇と地球温暖化とそして人類の滅亡しか待っていないでしょう。

私達はこのような傲慢な感覚に陥らず、自然の神秘を自らの内に感覚し、自然と私達の関りを深く考え直すことから次の時代を作っていく足がかりをみつけていきたいものです。

水は私達の生活や生命そのものに深く関係した自然の存在です。この大自然の贈り物に感謝しつつ水のことを時折考えてみてください。
この水の話の最初の詩を再掲してひとまず水の話を終わりにします。

小川があるので大河が出来ます。
大河があるので、海はいつでも水に満ちています。
海が水に満ちているので雲が出来ます。
雲ができるので雨が降ります。
雨が大地を潤して野菜や果物や麦や米が育ちます。
そうしてあなたはこの水と大地からの贈り物を食べるのです。
ですから、あなたの中に小川のせせらぎがあります。
あなたの中に豊かな大河の流れがあります。
海の怒涛と潮騒があります。
大空を漂う雲があります。
しとしとと大地を潤す雨があります。
あなたの存在はこの天地を巡る水の存在と極めて近いものです。
by masaaki.nagakura | 2008-08-29 08:57 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学4 水の話(20)美味しい水 その4 水和
今まで美味しい水の付いて話してきたことにその他一般に言われていることを加えると美味しい水の条件として次が挙げられます。

(1)ミネラルを適度に溶解していること
(2)溶解している陰イオンの種類が適度の構成であること
(3)有機物を殆ど含まないこと
(4)カルキを殆ど含まないこと
(5)鉄、マンガン、銅、亜鉛など金属溶解物を過剰にふくまないこと
(6)硫化水素、アンモニアなど腐敗臭を含まないこと
(7)PHが中性に近い(PH7付近)こと


上記は全て水の成分についての条件です。 
しかし、これだけが美味しい水の条件かと言うとどうもそうではないような気がしています。
水の成分が同じでも処理のしかたで水が美味しくなったり不味くなったりすることは実際あるのでないかと思います。

たとえば松下さんはNMRと言う分析手法を用いて「水の成分が同じでも水に変化が起こっている」と言う測定結果を得ました。
松下さんはこのことから「水のクラスターが小さいほど美味しい」と言う考え方を導き出しました。 
私は前に話しましたようにこの考え方には疑問が有ると思っています。
しかし水に何らかの変化が起こっているのは事実ではないかと思うのです。
私はこのことに「水和」と言う現象が深く関係しているのでないかと考えています。

「水和」と言うのは簡単に言うと水と水への溶解物が馴染むということです。
水の分子と水の溶解物質の間には電気的力が働きあっています。
溶解物質の分子を取り巻く水の分子(複数)は溶解物質の分子にたいして様々な配置を取りえるのですが、エネルギー的に安定した配置があって、そのような配置がとられた状態が「水和」が進んだ状態と言えるでしょう。

これはあくまでも仮説ですが、「水和が進むことにより水は美味しくなる」という可能性があると考えています。

何故そのように考えるかを説明します。
(1)水和が進むことによって溶解物質は水中に均質に分散し、溶解物質同士がくっつきあって存在するようなことがなくなる。
(2)水和が進むことによって溶解物質の分子が水の分子にしっかりと包まれた状態になる。
(3)上記(1)(2)のことから水和が進むことによって味を悪くしている多くの溶解物質の分子も水の中の全体に分散し、かつひとつひとつの分子が多数の水の分子に包まれた状態になる。
その結果、飲用した際に味を悪くしている溶解物質は舌の味覚受容体(味覚の刺激を神経系に伝達する細胞)に直接刺激を与える機会が減少する。
(4)更に水中の臭い成分も水和が進むことにより水の分子に強く束縛され、水中から空気中に移行する機会が減少し、結果として飲用した際に臭いを感じにくくなる。

要約すると「水和が進むことで不味い成分、臭い成分が味覚や嗅覚に感じにくくなり、その結果水が美味しくなる」と言うことです。
by masaaki.nagakura | 2008-08-27 13:09 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学4 水の話(19)美味しい水 その3有機物
前掲の小平市の浄水場の水の成分の中に有機物が含まれています。これらは水道水として検査が義務つけられている成分です。
実際の水にはこれ以外にも非常に多種の有機物が微量に含まれているでしょう。
特に日本の水道の水の原水は河川水である場合が多く、河川水には生命活動から生み出される非常に多種の有機物が含まれていると考えられるからです。
味に明確に関係している有機物は臭いのある有機物です。
水道水の中にある臭いのある有機物でよく問題となるのはカビ臭です。
日本では水道水の浄水にオゾンを使っているところが増えてきていますが、この主なる目的は臭いを消すことにあります。
特に日本で最初に(1973年)オゾン処理を導入したのは琵琶湖から取水している尼崎市の神埼浄水場でそれはカビ臭を消すのが目的でした。
このカビ臭というのは琵琶湖の放線菌や藍藻類が出すジオスミンやジメチルイソボルネオールという物質と考えられています。
カビ臭以外の有機物も味に相当関係していると考えられます。
概して有機物は水の味を悪くさせる方向に働くと思われます。
つまり美味しい水の条件の一つに「有機物を殆ど含まない」と言うことがあると思います。
ペットボトルで販売されている水は殆どが雪解け水や深層から汲みあげた地下水で有機物を
殆ど含んでいないと考えられます。
by masaaki.nagakura | 2008-08-26 08:56 | 若いあなたに語る自然科学
若いあなたに語る自然科学4 水の話(18)美味しい水その2 イオン
美味しい水とクラスターの大きさの関係は疑問ですが、美味しい水や不味い水があるのは事実です。その美味しさ、不味さの要因のひとつはイオンです。
水道水もしく井戸水に溶けている成分は非常に多く極く微量なもの(通常の検出感度以下)を含めると地層に存在する殆どの成分が溶けていると言ってよいでしょう。
試みに東京都の小平市の上水南浄水場出口での2008年3月の水質検査データを見ますと次のものが検出されています。
①砒素及びその化合物(0.003mg/L)
②硝酸態窒素(2.2mg/L)
③フッ素及びその化合物(0.08mg/L)
④ホウ素及びその化合物(0.02mg/L)
⑤四塩化炭素(0.0001mg/L)
⑥1,4ジオキサン(0.0004mg/L)
⑦1,1ジクロロエチレン(0.0002mg/L)
⑧シス-1,2-ジクロロエチレン(0.0005mg/L)
⑨テトラクロロエチレン(0.0007mg/L)
⑩トリクロロエチレン(0.016mg/L)
⑪アルミニウム及びその化合物(0.01mg/L)
⑫塩化物イオン(12.6mg/L)
⑬カルシウム、マグネシウム等(75.5mg/L)
⑭有機物(全有機炭素の量)(0.5mg/L)
⑮ウラン及びその化合物(0.0003mg/L)
⑯遊離炭酸(1.9mg/L)
⑰ナトリウム及びその化合物(10mg/L)
⑱蒸発残留物(140mg/L)

上記で⑤~⑩及び⑭は有機化合物ですがそれ以外は無機化合物でそれは殆どがイオンの形で水に溶けています。 特に値が高いのは⑬カルシウム、マグネシウム等です。これはいわゆるミネラルと呼ばれるもので少ないのが軟水、多いのが硬水で日本の水道の基準では300mg/L以上が硬水とされています。このミネラルがある範囲にないと水は不味くなり、特に硬水になると下痢をする可能性が出てきます。
日本の水はミネラルが大体100mg/L程度でこれは丁度いい範囲のようです。
ヨーロッパの水道水は主に地下水で、それが石灰岩の層に何百年も滞留して地上に出てきたものであるためにミネラルが(飲料水としては)過剰に溶けて硬水になると言われています。

水中ではミネラルやナトリウムがプラスイオンになっていますが、必ずそれと同じ数だけのマイナスイオンが水中にあって電気的にバランスがとれた状態になっています。それが炭酸イオン(CO3-)硝酸イオン(NO3-)、硫酸イオン(SO4---)、燐酸イオン(PO4---),フッ素イオン(F-),塩素イオン(Cl-)等の陰イオンです。
これらの陰イオンは水道水の水質検査では正確に検査はされていませんがこれらも味に関係することは確かなようです。
因みに灘の酒をつくる宮水は貝殻を含む地層から湧き出ていてミネラルと燐酸を適度に含んでいると言われています。

以上は水中のイオンが味に関係するだろうと言う話ですが、どのようなイオン組成が美味しいかについてはあまり判っていないのではないかと思います。
by masaaki.nagakura | 2008-08-25 08:57 | 若いあなたに語る自然科学