オゾンことはじめ9 太古の海中での紫外線
地球の対流圏の酸素が20%近くに上昇するまでは地上のオゾンと紫外線が強くて、生命が陸に上がれなかった、という話をしました。では対流圏の酸素濃度が低かった太古の時代に、海中では生命へのオゾンと紫外線の影響はなかったのでしょうか?
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まず紫外線について考えてみます。普通に考えて、海には海水があるので紫外線がさえぎられるのではないかと思うでしょう。ではどの程度の深さで紫外線がどの程度弱まるかを検討してみます。

次の二つの図は水の光吸収スペクトルを示します。吸収スペクトルは横軸に光の波長を、縦軸に吸収係数をとったものです。この吸収係数が大きいほど光は吸収されやすくて、透過しにくくなります。

はじめの図は水(蒸留水)の吸収スペクトルで2番目には海水と蒸留水の比較示してあります。
2番目の図にみるように海水は蒸留水に比して吸収係数が大きいので透過されにくいという事です。ただしこれは現在の海について言えることです。太古の海はもっと澄んでいて、蒸留水に近かったかも知れません。
そこで太古の海の吸収係数を蒸留水と同じと仮定してみます。
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紫外線は波長が400nm以下の電磁波ですが生命に特に有害なのは350nm程度以下と考えられます。
上の1番目の図を見ると350nmでの吸収係数は0.0038(1/cm)程度です。
そしてそれより波長の短い紫外線の吸収係数はそれよりも大きいのです。したがって吸収係数を0.0038として海中での深さと、紫外線の透過率の関係を計算すると次の図のようになります。
(透過率=EXP(-αL)×100 ここにα(1/cm):透過係数 L(cm):透過距離=水深 )
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この図で見るように海中では10mも潜れば紫外線量は2%(50分の1)程度に減少してしまいます。
ですから海中では40億年も前の海でも10mより深い所では紫外線の害をこうむらないでいられたと考えられます。350nmより短い波長の紫外線は10mより浅い所で殆どなくなってしまいます。
紫外線は弱い(波長の長い)方から順にA波(UV-A)、B波(UV-B)、C波(UV-C)と分類されていますが、最も有害とされるC波は波長が200nm~280nmの領域の電磁波です。 この領域では吸収係数は上の1番目の図より0.01(1/cm)程度です。吸収係数を0.1(1/cm)として海中での深さと紫外線の透過率を計算すると、下の図のようになります。
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計算結果によると推進4mで2%(50分の1)となります。
太古の海の魚は浅い所に居続けない限り、強力な紫外線の影響をあまり受けないでいられたと考えられます。
by masaaki.nagakura | 2015-03-10 22:45 | オゾンことはじめ
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