比企地方での山を高い順に並べたら剣ヶ峰(876m)、堂平(875.8m)、笠山(837m)となるようです。
しかし比企地方で最も目立つ山と言ったら笠山です。それは第一に地理的な条件(注1)で比企地方の各所から見られる位置にあることと、第2に山頂付近の個性的な形(注2)によります。 (注1笠山の地理的な条件:埼玉県の山を高い順に並べた場合に笠山より高い山は大部分が秩父地方、飯能市、横瀬町にあり、それらの市は埼玉県の北または西の方に位置し、埼玉県の南と東には笠山より高い山はありません。) (注2笠山の個性的な形:写真に示すように山頂付近がふっくらと膨らんでいておっぱい山とかいう人もいます。) 実際東武東上線で小川町から池袋まで行く間の相当のところからその姿を確認することができます。(どこまで南に下っても見えるかは未確認です。) 笠山は普段でもハイキングコースとして人気があるようですが、毎年4月に東部鉄道主催で開かれる外秩父七峰縦走ハイキング大会のコースにもなっています。 次はそのコース(東武鉄道の宣伝から)です。 笠山は小川町では一番高い山で、各所からよく見えます。 次は夕暮れに槻川という小川町の中心を流れる場所から笠山を撮ったものです。 写真の中央が笠山でその左の峰は笹山さらにその左が堂平です。 次は上の写真の笠山の部分の拡大です。 お日様は丁度笠山の後ろ付近に沈むので山の形がよく見えます。 次は忠霊塔がある小川町の中央の小高い丘から撮ったものです。 元日に笠山に上りました。これは小川町の桑原さんというバイオマスエネルギーの専門家で且つ有機農業者の知人が毎年元日に恒例で行っているもので今年は私も参加させていただいたものです。 総勢15名ほどで楽しい登山ができました。 山頂には笠山神社という社があります。 皆でケーキとお茶などで一服した後、山頂付近を見渡したら、「大願成就」と刻まれた碑文がありました。 興味をそそられたので全文を写し取りました。次がそれです。 大願成就碑文: 昭和四十八年十月二十九日以降中央気象台創設以来の異常旱魃続き農作物は勿論飲料水にさえ事欠き稀有の天災に直面するも尚降雨の気配なき快晴の日々が続いた。茲に於いて止むにやまれず十八会員相図り古来より信仰厚き笠山神社に雨乞祈願を修業す。時に翌年一月二十日未明五時登山御来光を拝し慈雨を恵み給わんと教民救済御加護祈願を「雨が立った龍王」と絶叫三唱に及ぶ折しも極寒の松〇(1字不明)俄かに起り翌二十一日に大雪となり森羅万象悉く一息の期を得た。この霊験顕かなるを感謝と一同連署大願成就の建碑依って件の如し。 昭和四十九年五月一日 松本繁夫 田口茂 (他9名計11名連記あり) つまり笠山神社で雨乞いをしてそれが成就したことを記念した碑である、ということです。 私の住む小川町飯田でも昔は雨乞いの習慣があり、雨乞いの時には石製の船を水に浸す儀式を行ったということを聞いています。 雨乞いそのものが効果があるのか、私はわかりませんが少なくとも旱魃による困窮のなかで(水の奪い合いをするのでなく)雨乞いが結束を強めたのは確かではないのか、と思いました。 次は笠山の登山口(自動車で至る中腹の登山口)にある看板です。この中の笠山神社の説明によれば神社が1839年と1903年に焼失して立て直したということです。実際の最初の建立はいつか分かりませんが200年ほど以前からあったのは確かでしょう。 話は変わりますが、笠山や堂平の数キロメートル東側に慈光寺という寺があります。この寺は673年に建立されましたが、783年に伝教大師より天台密教の教えが伝えられそれ以来比叡山の延暦寺の関東支部とも言われ非常に多くの修行僧がその寺の周囲に僧坊を建てて住み、修業していたと聞きます。 住職の話では「このあたりの山が800M級で比叡山の周辺の地形に似ていて山岳を踏み歩く修業をするのに向いていたというのが、比叡山の関東支部と位置付けられたひとつの理由である。」ということでした。確かに比叡山は標高848mで笠山や堂平の標高に近いです。比叡山では現在でも千日回峰という修行がなされていて7年の間に一日30-60kmを通算1000日間峰々を渡り歩く荒行のようです。 であるとすれば往時の慈光寺の修行僧にとって笠山、堂平、剣ヶ峰などは恰好の修行場であり、庭のごとくに踏み歩いていたのではないか、と想像します。 またそれは今より1000年以上前からということになります。 そのようなことから笠山は神道や仏教の信仰にも繋がる霊的な山である、という感をも持ちます。 そのような想いから笠山を比企の活性点の一つに加えました。
by masaaki.nagakura
| 2013-01-06 21:30
| 比企の活性点
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