存在感への脅威が国民の大多数に浸透することが戦争が開始される条件であることを述べました。
そのような脅威の感覚は具体的な事件などで「事実上の脅威」として認識されます。 たとえば日本が真珠湾攻撃を行ったときに大義名分の一つとされたのは「欧米による不当な海上封鎖」です。 しかし、それを国民の大多数が脅威として感覚し、開戦を支持した裏には歴史的に形成された心情があるように思います。 それはペリーの来航以来日本人の心情に刻み込まれた欧米への脅威の感覚です。 その脅威の感覚というのは、初めて近代文明の持つ底知れない力を目の当たりにし「西欧が力において日本よえる遥かに勝っているかも知れない」すなわち「日本人は彼等に比して遥かに劣っているかもしれない」という劣等感あるいは屈辱感も伴っているものであったのかも知れません。 実際に徳川幕府が(不平等条約か否かはとも角)日米和親条約と引き続く日米修好通商条約いう二条約を受動的に結ばされたという事実は、当時芽生えつつあった日本人の心情にくすぶる劣等感あるいは屈辱感を大いに刺激したものと考えられます。 ペリーの来航を機に芽生えた攘夷の思想は非常に激しいものでした。 太平洋戦争の開戦はその時以来潜在的にくすぶってきた屈辱感から解放される、という感覚を国民の多くに与えたのではないか、と思うのです。 ペリーの来航以後明治維新があり、富国強兵策に進んで、日清、日露戦争があり、その延長線上に太平洋戦争がありました。この歴史は日本人がペリーの来航以来心底に感じてきた欧米への屈辱感から脱却しようとしてきた歴史ではなかったのか、と思うのです。 個人においても劣等感から屈辱感へ、また屈辱感から競争心、向上心、克己心への道は成長(もしくは自己変革)の過程でよくあることでないかと思うのですが、これは国家においても同じようです。 しかし問題はその成長(もしくは自己変革)の過程において戦争を伴ったということで、ここには個人の自己変革(これもいろいろ形はあるでしょうが)とは異なる何かがありそうです。 個人も喧嘩をすることはよくあります。 口論だけでなく殴り合いと言うのもあって、これは社会的には「暴力沙汰」とも言われて、一般に良いものとは考えられてなく、一方が怪我をすれば法律で罰せられることもあります。 個人には法律でも認められない「暴力沙汰」が戦争と言うことになると、正当化されてしまう、と言うのは何故なのでしょうか。 ただ、ここで考えなければならないのは、「それを正当化している」のは戦争を遂行しようとしている国家であって、周りの国は必ずしも認めていないのです。 個人の場合であっても喧嘩をしている当人は多くの場合自分に正当性があると思ってしているのでしょう。 どうも戦争というのはその底に個人の喧嘩と相当類似した、心情的な構造を持っているようです。 個人の喧嘩と言うのも日頃から「相手が自分を馬鹿にしる」とか「相手を日ごろから生意気であると思っていた」とか「自分を軽んじている」とか、「自分の弱点を責める」とか一方的あるいはお互いにそう思っていた場合に、何か具体的なこと、自分の権利を侵害されたと思うようなことをキッカケに始まることもあるようです。それから弱いものいじめと言うのもあって、これは特に引け目(劣等感)を感じている人が、自らと同様の弱点を持っていると見た人をいじめて、その引け目を克服しようとする(劣等感から解放されようとする)場合もあったり、あるいは集団内の異分子的な性格の一人をいじめて、それにより、自分達の結束を強めようとしたりする場合もあるようです。 国家のしている戦争と言うのも心情的な構造はそれらの個人や集団の場合と大差ないようにも見えます。 しかし、国家の場合にはそれが、非常に多くの人数を動員する、と言うのが個人の喧嘩とは相当に異なっています。 まず非常に大勢の人数を動員する、と言うことについてどうしてそのようなことが考えてみたいと思います。戦争に兵士として参加するのは職業軍人、志願兵、国家の徴兵の3種でしょうが、特に第2次世界大戦では徴兵が多かったようです。 兵士への総動員数は720万人位で戦争開始の軍人数240万人から480万人が徴兵されたことになります。 総動員数の3分の2が一般の人から徴収されたということになします。 また、総動員数の人口に対する比率を見て見ます。当時の日本の人口が7100万人程度ですから10人ひとりが兵士となったことになります。さらに、兵役に適した性別(男子)、年齢と体力の持ち主は2000万人程度でしょうか。その3人に一人以上が戦争に動員されたことになります。 (つづく) (つづく)
by masaaki.nagakura
| 2012-03-27 08:36
| 想うこと
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