私は10代の後半から20代の終わり頃まで自称ニヒリズムというのに陥っていました。
どうしてそうなったか、これは後からの記憶を辿っての話ですが、次のプロセスでニヒリズムに陥っていったと考えます。 幼児期(小5まで:横浜~東京):幼い頃より恐怖心が強く、幼い頃は「死んで地獄に落ちる」ことが最大の恐怖でした。地獄に落ちた夢なども見ました。その思いを離れているときは元気で活発な子であったようです。 少年期から思春期(小5~中3:沼津):科学を学んで「地獄はないだろう」と安心できたました。沼津という土地柄もあり山や海で遊び、模型作り、手品など屈託なく遊べた時期です。一方女の子への関心も芽生え、それもあってか、羞恥心が強くなりました。 ソフトボールやバレーボールでドジをするのが怖く、運動会のリレーに選手として出ると妙に緊張してしまったりという苦い思い出があります。 思春期から青年期(中3~高3:蟹江):死への恐怖は引越しした家の近くにあった火葬場への恐怖やライ病への恐怖になりました。 またこれは死への恐怖とは別かもしれませんが精神病になるのではないか、という恐怖もありました。 女性への憧れと共に好きな女性に口を聞けない、と言う自分に対するふがいなさもありました。 そのような不安や恐怖や自分へのふがいなさのある一方で一方で科学への興味に自分をのめりこませていったのです。 科学は自分にとって大きな救いになっていました。科学は世の中の軋轢から自分を開放してくれる存在でした。 受験校にあったストレスも和らげてくれました。世の中の価値基準を低いものとし、それに捉われない気持ちにもさせてくれたのです。宇宙やその歴史について考えるのが好きになりました。「多くの人が世の中の価値にとらわれ翻弄されているが、それがどうしたということだろう。やがて誰もが死を迎える。そしてやがてこの地球も滅びてしまう。何をあくせくし、何を恐れおののくことがあるだろうか。」とよく想うことがあり、それが自分を世の中の束縛から自由な隠遁者のような感覚に浸らせてくれたのです。 青年期:(大学~社会人)科学を学ぼうと大学(早稲田大学応用物理科)に入学したのですが、真剣に理工系の学問に打ち込めず留年を繰り返していました。人間の行為の一切が虚しく自らの行為も虚しいという感覚が、絶えずあって,それが真剣に目前の課題に向かわせるのを妨げていたのです。 この「一切は価値がなく虚しい」という感覚から抜け出したいという思いもあったのでしょう、哲学書や宗教書を読み漁り、一方でパチンコに自らを没頭させたりもしました。でもどれも解決にはなりません。 自分の生活をまるっきり変えてみようということで「山谷に入り、山谷の人達を一緒に肉体労働の生活をしよう」と、思うに至りました。 その意思を下宿のおばさん(江古田の小竹町の甲斐さん)に話たら、それが直ちに親元に伝わり、蟹江の実家に帰郷せよ、と言うことになりました。 親父が言ったのは「お前は砂漠を旅して、暑さに参っている旅人のようなものだ、そこに満々と青い水をたたえた、湖が現れた、そこでその湖に飛び込もうとしている、しかしそれは青酸カリの入った湖なのだ」と言うことです。 この言葉でやむなく学業に向かうことになりました。既に大学3年になっておりそれから卒業するまで4年間は新宿は百人町の下宿で殆ど昼夜の区別もなくなることもある位、机に向かっていた時期もあります。 「学是大慈悲業」というのが当時下宿の壁に貼ってあった言葉であり、そんなことで自らを振りたたせようとしていました。 それでもその虚しさの感覚は付きまとっていました。 その感覚から立ち直っていったのは早稲田大学を卒業し、名古屋大学の修士コースに入った頃からではではないかと思います。 自分を虚無感から立ちなおさせた一つの考え方は次です。 「確かにこの世界には客観的に与えられる目的は存在しないかも知れない。それなら自ら目的を見つければ良いのでないか。また本当にこの世の一切が虚無であるならば、虚無だ、虚無だと思い続ける意味もない」 あるいはこの考えでニーチェの言う消極的ニヒリズムから積極的ニヒリズムに転じたのかも知れません。
by masaaki.nagakura
| 2011-10-07 08:13
| 想うこと
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